グリーン・ニューディール時代と原子力

またまた「原子力の日」記念シンポジウムですが、この回は敢えて書き起こすほど中身が無いんでスルーしようかと思ったのですが、作家の鈴木光司さんが妙にハッチャけてるのが少し面白かったので後半部分だけ引用してみたいと思います。小沢遼子さんの「取り込まれちゃってる感」も興味深いですね。 *1 *2

グリーン・ニューディール時代と原子力 --環境と経済の調和と原子力の役割
 
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原子力を基幹として使っていく必要がある
 
小沢遼子(以下「小沢」)  *3
 日本が先進国であり続けるための根幹になるエネルギー源は、やはり原子力になりますか。
 
鈴木光司(以下「鈴木」)  *4
 化石燃料のほかに、大きなエネルギーを持っているものは、やはり原子力しかありません。そして将来的には、水素核融合の制御にもっていかざるを得ないでしょう。
 水素核融合の制御は、非常に難しい技術であり、国と国が協力しあうことが絶対に必要になります。兵器への転用が可能だからこそ、一国のみの開発は控えねばなりません。エネルギー問題の解決と、世界平和の推進が、同じ機軸で語れるようになってほしいと思います。
 
秋元圭吾(以下「秋元」)  *5
 エネルギーも基本的にバランスが非常に重要だと思っていますが、CO2排出を制御しないといけない、という強い要請の下で考えると、特に日本においては原子力しかあり得ないだろう、と考えています。
 もちろん再生可能エネルギー風力発電太陽光発電もまだ非常に小さいレベルですから、それを拡大していくことはやらないといけない。ただ、それが基幹になるかというと、絶対なり得ないので、原子力をしっかり基幹として使っていく必要があると思います。
 そして原子力は比較的安価で使っていける。エネルギーというのは非常に特殊な形で、電気は何から供給されていても、人間の効用は基本的には同じです。もちろん、温暖化対策のためになっていると思えば、少しコストが高くても受けようという気はしますが、実際には電力は高いエネルギーを使っても、安いエネルギーを使っても一緒です。そうすると、なるべく安いエネルギーで使っていくことが社会の効用を高めるためには非常に重要になってくる。
 そこで使わなかったお金を別の産業に費やせば、そこでまた産業が回って経済が活性化しますから、なるべく安定的にクリーンで安い電気という意味では原子力が非常に重要なエネルギーだと思います。
 
鈴木
 一ついい方法があります。太陽のエネルギーは360度方向に発散しているわけで、地球に当たっているのはその中でもごく一部です。宇宙空間には太陽光でいっぱい降り注いでいます。太陽光発電のネックは雨や曇りの日、夜には発電できないことです。しかし大気圏の外に巨大なソーラーパネルを作って、太陽の方向にちょうどいい角度に向けたら、ものすごい公立で休みなく太陽光をゲットすることができます。しかも、地球には何の迷惑もかかりません。
 そのエネルギーをどうやって地球に送るか。マイクロ波かレーザーでしょう。理論的には可能だと思います。
 基幹エネルギーは、少しSFっぽいですが、最終的には水素核融合と地球の大気圏の外に出した巨大なソーラーパネル。100年先ですよ。
 
秋元
 2100年というスケールになった場合には、やはり核融合やパネル衛星(SPS)といった技術は重要な可能性が出てくると思います。
 
手嶋龍一(以下「手嶋」)  *6
 グリーン・ニューディールを提唱したバラク・オバマ、正にその人が今、核のゼロ・オプションと言っていて、それがようやく緒についてきた。
 つまり、水素核融合ソーラーパネルも通常の原子力発電も実は最大のネックは、核兵器、核戦争につながるかもしれない、という不安を一般の市民が持っていたのですが、これを超えるような説得力を今まではもち得なかった。
 ところが、ようやくアメリカもロシアも、おそらく中国も核軍縮には後ろ向きではいられない時代を迎えています。世界が核のゼロ・オプションに向けて動き出してきた。これが重要なきっかけになって、原子力に新しい可能性を拓く時がやってきました。
 最大のネックである、核戦争の手段に転用されるのではないか、という危険はまだ現にありますが、その危険を徐々に減らそうという動きが出てきている。その点で人類が「神の火」と言われる原動力を存分に活用できる日も近づいています。
 
■表現するということは常に勇気が伴う
 
小沢
 日本で原子力というと、やはり原爆が落ちたことがものすごく効いているというか、染み込んでいるので、反発は容易には消えない。「爆弾と原子力発電は違う」と言っても通らない。
 
鈴木
 この前、六ヶ所村に見学に行ってきたのですが、自分が物理好きを自称しているにもかかわらず、原子力発電の仕組みをそのとき初めて知ったのです。簡単に言ってしまえば、「何だ、これは蒸気機関ではないか」ということなのです。メカニズムは簡単であり、原子炉が爆発するはずがないのです。
 ところが、物理に疎い人は、原子力と聞いただけで、何か爆発するようなイメージを持ってしまうような気がして成りません。うちの母がそうでした。
 
小沢
 そうなのです。
 
鈴木
 国民に正確な知識を与え、誤解をなくす役目を負うのがメディアのはずなのに、そこのところが、うまく機能していません。特に、テレビは逆のことばかりやっているようです。
 
手嶋
 原子力業界の方は、何か言うと、すぐにメディアにたたかれるからと言って、堂々とした正論を吐かない。「原子力発電はCO2を出さない」ということすら言うのをはばかる雰囲気がある。真の意味で正しい情報の発信をする余地が大いにあります。
 
鈴木
 表現するということには常に勇気が伴うのです。
 表現するというのは、何か言い切ることです。「花が美しい」と言っても、「美しくない花もあるよ」という反論が必ず出てくるわけです。反論を引き受ける覚悟がなければ、いい表現は出てきません。
 
小沢
 そうですね。
 
鈴木
 日本がリーダーシップを取るために必要なのは、反対意見に臆せずに正しいと思うことを世界に向かって堂々と主張する勇気です。
 
桝本晃章  *7
 今日は鈴木さんの横に座らせていただいて大変うれしく、またびっくりしました。マイクロ波の宇宙太陽セルのアイデアは、真剣に取り組み、油の値段が相当上がれば、十分可能性の高い技術だと思います。すでにそういう勉強されている方もいらっしゃいます。
 そして、「表現するには勇気がいる」というのもなるほどと伺いました。私はどっぷり電力会社の者ですが、私たちは世の中にわかっていただくつもりで説明していても、どうしても知っていることをただ一生懸命メッセージとして出してしまう。そうではなくて、やはり受け取る方々のことを考えてものを言う工夫をもっとしないといけないと、常々そう思っています。
 また、これからはある地域や二国間でエネルギーや気候変動に関する取り組みあってもいいかなと思います。
 そのときに、日本が唯一持っているのは技術です。その技術のおそらく数十年間のエネルギー・ソースのコアは原子力、そして省エネ技術。ここをしっかり日本が持っていることが、日本の発言権である意味で実をもって響く大きなメッセージの元だ、と私は固く信じています。
 
小沢
 何年くらい前でしたが、原子力はクリーンだ、CO2を出さない、と原子力関係の人が言い出して、「これが原子力の時代がきたぞ」というような、解禁された鮎釣りのような感じでした。前から日本が持っていたエネルギーを節約する工夫や、被爆国でありながら核という原子力発電に取り組んできた努力もっとまともに世界に向かって発信してよいのだと思っています。
 グリーン・ニューディールでは、相当日本に発言するチャンスが出てくるし、また発言しなければいけないと思います。その中には、東アジア共同体の構想もあれば、原子力の問題や核の不拡散問題など、いろいろな問題を含んでいると思います。
 今ちょっと景気も悪いしと落ち込んでいますが、やり方を間違えなければ、もしかしたら日本にとっていい時代がきているのではないか。とても希望が持てる時代になっているという気がします。今日は、大変有意義なお話を皆さんからいただいたと思います。どうもありがとうございました。

作品を読んだことないのでカテゴライズが正しいのか分かりませんが、SF作家のような人は、豊田有恒さんなんかもそうですが、原発に関して「理解して見せる」ことが多いように思います。原子力村の人達にはありがたい存在だったのではないでしょうか。
 
・・・誤字脱字等のチェックは後日・・・

*1:月刊『原子力文化』2009年12月号 P3-11

*2:シンポジウムは2009年10月22日、東京・有楽町朝日ホールにて開催

*3:小沢遼子・・・評論家 Wikipedia

*4:鈴木光司・・・SF作家・小説家 Wikipedia

*5:秋元圭吾・・・地球環境産業技術研究機構・システム研究グループリーダー RITE

*6:手嶋龍一・・・外交ジャーナリスト Wikipedia

*7:桝本晃章・・・日本動力協会会長 日本動力協会