『右翼の言い分』より

Jodorowsky2007-03-18


宮崎学著『 右翼の言い分 』を読みました。
この本は加藤紘一実家放火事件後に、日本の民族派に宮崎氏がインタビューしたもので。内容はその組織の現状や、加藤紘一実家放火の是非、ヤクザとの関係、ネット右翼に関してなど。
インタビューに応じている右翼団体と、その関連リンクを以下に示します。

正氣塾 公式
日本皇民党 國士舎
忠孝塾愛國連盟
大日本一誠会
敬天新聞社 公式
松魂塾 Wikipedia
大日本朱光会 公式
護國團 公式
二十一世紀書院 公式
日本青年社 公式 Wikipedia
大行社 公式
大日本愛国党 公式
一水会 公式
統一戦線義勇軍 公式
行政調査新聞社 公式


興味深かったのは、今の民族派団体の殆どが専従の組織員は持たず(代表や幹部クラスは除く)、皆なんらかの定職について活動していること。これは度重なる商法改正により、企業から活動費を得ることが出来なくなったというのが大きいようです。
加藤紘一実家放火に関しては、殆どの民族派が賛同している。言い分としては、「加藤氏は権力者である」こと、「人の生命には危険を与えてない」こと、「切腹をして責任を取っている」ことが理由として挙げられてる。最後の責任の取りかたが民族派の独特・重要なものと感じられました。
ヤクザに関しては、母体が任侠系だったり、世話になってたりと、どうしても切れない関係というか。メンタリティが近いのでこれはしょうがないのかも。
ネット右翼に関しては賛否両論。「ネット」や「小林よしのり」で目覚める人が増えるのは良いこととする人もいれば、人間的に信用できないという人もいました。


ネット右翼を一番強く否定していた、野村秋介氏が設立した「二十一世紀書院」の現代表を務めている、蜷川正大氏の対談から興味深い箇所を抜粋。

・・・


宮崎:堀米さんの事件についは、どんな感想をお持ちですか?


蜷川:よくぞやったと思いました。暴力がいいか悪いかという話になれば、3歳の子どもにだってよくないことだとわかると思います。暴力、テロはよくないことです。
 堀米さんの行いが世間からテロと受け取られることについては、仕方がない面はあります。しかし、テロとは何か、もっと厳密に考える必要があります
 野村は生前、河野邸を焼き討ちし、経団連を襲撃しました。いずれにおいても、野村は傷つけませんでした。堀米さんも、誰も傷つけていません。これはテロではありません。天誅だと考えます。私は「天に口無し、人に以って言わしむ」という表現の方法を公定する立場です。私は、天誅を肯定します。


宮崎:最近、ネット右翼新保守主義といわれる人たちは、ずいぶん過激な意見を表明しています。この人たちは、蜷川さんが言う覚悟が伴っていないと思いませんか?


蜷川:非常に卑怯な人たちだと思いますね。自分を犠牲にすることを前提にしない発言や行動に、他人が感動するはずはないと思っています。右翼民族派と新保守は、理論面ではほとんど違いはありません。しかし、我々は直接行動を担保し、留保しつつ自分の発言をします。それが唯一、民族派に残された表現方法ともいえます。野村はつねに言っておりました。信念を貫けば十字架が待っているんだと。


宮崎:蜷川さんの門を叩く最近の若い人は、どういう傾向ですか?


蜷川:一般の人がほとんどです。インターネットや機関紙を見た人が多いです。最初は恐る恐る来るんですが、うちの会社は、いわゆる右翼団体ではありませんので、女性の事務員などを見て、それでほっとして溶け込んできます。その後、勉強会や野村の「群青忌」といった追悼祭に来るようになります。千代田区公会堂でも行いましたが、いつも満員です。参加者の7割は一般の人です。


宮崎:ネット右翼的な感じの人も来るでしょ。


蜷川:そんな連中がいくら来ても、僕はいっさいつきあいません。そういう匂いがすると嫌なんですね。自分が安全圏、炬燵に入っていて他人は寒いところを歩けっていう人は、誰からも支持を得ることはないでしょう。
 それに比べたら、堀米さんは潔い。野村が河野邸を焼き討ちしたときは懲役12年でしたが、今の社会情勢を考えると、堀米さんの場合はおそらく15年、下手すれば無期もあり得ます。若い人たちに、そうしてくれと言ってるわけではありませんが、自己犠牲の伴わない運動なら、初めからやらないほうがいいと思っています。


<中略>


--話が北朝鮮拉致問題に移ったとき、蜷川氏は「政府が介入するより、民間でやたほうがうまくいく」と語った。実際、右翼が"陰の外交"で活躍した経験からの意見だ。


蜷川:中曽根さんが総理大臣のときに、秘密の特使として四元さんが支那に行きました。四元さんは血盟団事件にもかかわった有名な右翼人です。今ならマスコミが騒いで大変ですよ。中曽根さんは思い切ったことをしたと思います。いま拉致問題の場合でも、右とか左とか区別する時代ではないでしょう。


宮崎:野村さんはカメラマンの石川さんを助けました。ああいう役割が果たせるということですか。


蜷川:あのときは、元山口組黒沢明会長とか、フィリピン在住の日本人のヒロ山口氏といった、いわゆる民間人の方々の協力によって救出が成功しました。お金は、亡くなられた笹川良一会長に野村が直談判をして出していただきました。あのときも日本政府、外務省はほとんど動きませんでしたが、民間人の命懸けの努力によって無事に解決したわけです。
 ところで、北朝鮮金王朝体制というものは、本来は、アメリカの手など借りずアジアの力で潰すべきなんです。民間外交をもっと活発にやる必要があると私は思います。その一方でアジア各国の政府が協調すればいいんです。仮に北朝鮮が潰れて難民が出たら、アジアの各国で引き取ればいいんですよ。簡単な話です。


宮崎:日本の民族派はかつて玄洋社が主張していた大アジア主義に戻るかどうかが問われているということですか。


蜷川:おっしゃるとおりです。野村は遺著となった『さらば群青』という本のなかに、民族派玄洋社の原点に戻らなければならないと書いています。


宮崎:関東大震災のときに在日の朝鮮人や中国人が虐殺されていますが、体を張って止めたのは黒龍会でしたね。


蜷川:前のことですが、選挙の折に石原慎太郎陣営が新井将敬氏の選挙ポスターに「朝鮮人*1ってステッカーを貼って歩いたことがあります。そのとき野村は、「とんでもない野郎だ、朝鮮人で何が悪いんだ。ましてや日本で在日として生まれ、様々な苦労を乗り越えて、よく政治家を目指すようになったとエールを送るのが日本人としての立場じゃないか。同じ日本人として恥ずかしい」と言って非常に憤っていました。
 そのときは、野村と新井将敬氏には一面識もありません。新井氏が落選した後、とある方の仲介で二人は会うことになったんです。依頼、新井氏は野村に心酔しましてね。そして、自殺されてときには、側に脇差が置いてあったそうです。それは、野村が新井氏に送った脇差でした。
 新井将敬氏のような在日の人に比べれば、よほど日本人としての意識がないんじゃないかと思える連中が日本にはいます。新撰組が武士でないゆえに武士の魂をもって最強の軍団になったのと一緒で、新井将敬氏にもそういう美意識があったように思います。


宮崎:野太い民族主義が求められるということですか。


蜷川:民族主義が差別主義と同義語であってはいけないと思うんですよ。


<中略>


--さて、野村氏の朝日新聞社での自決とは、いったいどういう心情に基づく行動なのか。そして蜷川氏はどのように見詰めているのか。


宮崎:野村さんは朝日で短銃にて自決されるわけですが、朝日新聞をどう見ていたのでしょうか?


蜷川:野村が自決したとき、動向した秘書がその一部始終をテープに録っていました。そのテープのなかで野村は、「朝日が憎いのではない。社会の木鐸として、きちっとしたことをしていただきたい」と言っています。早い話が戦前は戦争を賛美し、終戦になったとたん一億総懺悔。果たしてマスコミは、そういうことでいいのか。野村は単に朝日という個人を攻めていたわけではなく、戦後のマスコミ全般に対して警鐘を乱打したのです。先ほども言いましたが、河野邸焼き討ちにしろ、経団連にしろ、朝日にしろ、野村は誰も傷つけていません。野村をテロリストと言われることについて、私は疑問を思います。


宮崎:野村さんの自決の原因について僕自身の疑問点をいいますと、ご本人や関係者が事件に関係したかはともかく、赤報隊事件に対する責任を取ったのではないですか。


蜷川:私は赤報隊の事件があったとき、東京拘置所にいました。それから網走に行きましたから、事件についてはほとんど知りません。野村から話を聞いたこともほとんどありません。
 私がシャバに帰ってきたのは平成2年(1990年)の2月ですが、野村が自決するのは、それから3年後です。しかし、その間にマスコミは、一度も赤報隊関連で野村のところに取材にくることはありませんでした。生前の野村の考えを聞くためにマスコミが私のところに取材にくるようになったのは赤報隊事件の時効の1年くらい前からです。生前に野村から何か聞いていれば、私にも何か答えようがあったのですが。
 ただ、間違いなく言えることは、よしんば野村が朝日を襲撃するとすれば、標的はトップだけということです。記者を手にかけることは絶対にしません。


宮崎:野村さんなら、散弾銃で撃ち込むようなことはしないでしょうね。また、犯人が右翼陣営のなかから出たとしたら、また仮に、野村さんが知っている人物がやったとしたら、野村さんは「右翼はそうじゃねえんだ。右翼の身の処し方はこうなんだ」ということを示したんじゃないかと私は思いますが。


蜷川:ちょっと僕はノーコメントかな。

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今のネトウヨ層は、野村秋介とか知らないのかもなぁ...


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四元義隆 解説
黒沢明 元山口組系黒沢組・黒沢明組長
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新井将敬 Wikipedia
石原慎太郎 公式 Wikipedia
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*1:正確には『北朝鮮から帰化