ODA感謝要求


先日、下記のインターネット番組を視聴しました。

ビデオニュース・ドットコム
マル激トーク・オン・ディマンド 第309回(2007年03月02日)
『 骨抜きにされる小泉改革
ゲスト:草野厚氏(慶應義塾大学教授)
http://www.videonews.com/on-demand/301310/001004.php

残念ながら、この番組は月額500円で会員登録しなければ動画は見ることはできません(レビューと無料放送分は視聴可能。
放送内、ODA絡みで気になった点を書き出してみました。

※因みに本放送のメインテーマは、政府系金融機関の統廃合で官僚が暗躍して骨抜きにされているという内容です。

神保
最近よく聞くのがね、ODA大綱なんかにも謳われていることでしょうけどね。
ODA国益を結び付けるって考え方があるんですよね。
勿論、ただバラ撒くっていうのは良くないから、なんかの益がなきゃいけないのはその通りだけど、どうもちょっとそこでいう国益っていうのがね、近視眼的って言ったら変だけど、何かやってくれるからとか、なんか見返りに貰える所にやろうというようなふうなニュアンスになっているような気がするんですが。


草野
ふうもニュアンスどころかかなり露骨。


神保
明快ですか、そこは。


草野
非常に明快で、実はこの解体*1のなかでも書いて、全然触れてなかった話なんだけども。いわゆる内閣に海外経済協力会議というのができて。内閣総理大臣官房長官外務大臣経済産業大臣財務大臣、この5閣僚がこれは全部非公開で議事録も何にも無いんですけども。それはそれとして大変問題だと思うんだけども。そこで議論されている内容はですね、やっぱり国益に資する協力っていうメインにあげてんですよ。
それは、もう少し分りやすく私が解釈すると、資源開発であるとか、あるいは逆の意味で国益で資さないのでやらないということで、中国に対する援助というのを、止めたほうがいいんじゃないかと、ところが実は、あれだけ経済発展したっていうのは、この本※1をよく読んでいただければ分るんだけど、円借款のおかげっていうよりも、国際金融部門の旧輸銀の融資であれだけ元気になったっていうことなんですよ。
それはともかく、ですから短期的なね、もっと言えばね、こういうような話をこの間、参議院ODA特別委員会ってところで、公聴会で証言をしたんですけど。こんな質問がきました。日本がメコン流域で橋を幾つも作ってますと、で、ある国は、これはラオスなんですけれども、紙幣に「橋」それで「日本に感謝」て「日の丸」がくっ付いてるんですよ、こういう国もありますと。他方ね、タイがやっぱりメコンブリッジで、これは切手だったかな。そしたらある議員さんがね「片っ方は日の丸くっついてるけど、片っ方は日の丸くっ付いて無いじゃん」と「これけしからん」という問題提起をされたんです。
やっぱりマズイよねと、私は率直に思いましたよ。だから私はどういうふうに反論したかっていうと、日本だって、援助されてここまで発展してきたんだと、とりわけ世界銀行から低利の融資を沢山受けてですね、東名高速道路だとか新幹線だとか、いろいろ作ってきたと、だけどあのときに感謝しましたかと、なんかこんなプレートを作って、世界銀行有難うってこんなことやったかと、やらないじゃないでしょうかって。
そしたらおだまりになってしまいましたけども。
そういうようなレベルでODAを考えてもらったら困るんですよね。
中長期的にこのそれこそ後でやはり問題になると思うけど、地球規模の環境の問題だとかね。
日本も今まで相当に問題のある案件も抱えてましたし、非効率の部分もあったし、住民移転だとか環境破壊で、トラブルを起こした案件があるってことは間違いがないし、より良いやり方っていうのは有ったと思うから、それはきちんとオーバービューしなければいけないんだけど。全体としてODAがそんなに悪者にされる理由があるかっていうと、そうじゃない。
で、しかも、そういうことをやった結果、感謝してくれないからといって、それはけしからんじゃないかと言うこういう姿勢も、また問題ではないかと私は思いますけどね。

※ PART2(5:34〜9:24)より抜粋、一部冗長部分を改変。

草野氏の発言は示唆に富んでいて。日本の援助が「相手国の国民に知らされない!」と憤っている側が、過去に自分の国が援助されてきたという歴史を忘れているという皮肉な現状を語っておられます。
ま、とりあえず税金を貰ってネトウヨレベルの質問をしてるバカは誰だ?と思い調べてみました。


第166回国会 政府開発援助等に関する特別委員会 第2号 平成19年2月13日(火)
 議事録 WindowsMediaPlayer RealPlayer

議事録から該当する答弁を抜粋します。強調は引用者。

岸信夫 
その中国の戦略性、機動性については我が国もある意味で勉強し、見習っていかなければいけない点ももしかしたらあるのかもしれないというふうに思います。また、もう一つで、中国がこのODAを武器に国際的に関係を強めていく。その中で我々がやはり少し不安になるのは、経済的な部分のみならず、やはり安全保障の面というのも当然出てくるのかなというふうにも思うわけです。
直接的にやはり、そういうことを考えますと、私は、アフリカに対する貧困に対する支援というのももちろん必要なんでしょうけれども、地理的なことを考えますと、やはり我が国が考えなければいけないのは、東アジアあるいはASEANプラス6という今経済連携も考えた上で、この地域に対する戦略的な支援ということも考えていかなければいけないんだろう、こういうふうに思うわけです。
先日、ちょっと新聞に出ておりましたけれども、インドシナの東西に走る幹線道路が開通、昨年の十二月にいたしました。それで、ラオス、タイの国境にメコン川に架かる第二メコン架橋というものが架かったわけですね。日本の円借款でできた。先ほど草野先生のお話にもありましたけれども、この向こうの切手に、それで記念切手が発行された。タイからもラオスからもこれは発行されているんですけれども、それを写真見たんですけれども、ラオスの切手には、タイとラオスとそれから日の丸が、タイの国旗、ラオスの国旗そして日の丸が付いている。タイの切手には、ラオスの国旗とタイの国旗は付いているけれども日の丸は付いていない。切手に日本の援助ということがどこかに書いてあったかどうかちょっとよく見えなかったんですけれども、いずれにしてもそういう感じです。
ほかの、いろんな切手がいろいろ発行されているというのはそのときに改めて認識したんですけれども、どれを見てもタイの切手にはそういうのが付いていなかったんですね。ほかのところには、たまたまそういう日本の国旗なり、あるいは英語でジャパニーズグラントエードと、こう書いてあることが多く見えた。国によってそういう対応がちょっと違うのかなとは思うんですけれども、ある意味、その辺は日本としてももっと相手国に求めていかなければいけないんじゃないかな。
求めるといいますのは、これ、いわゆる結果で向こうが評価をしてくれる、どうもありがとうと、先ほど出ましたけれども、感謝をしてくれる。この気持ちは大切なんですが、それをいかに、相手の被援助国の国民に知らしめてもらう。そして、そのことが結果として、じゃ相手国が今度日本との外交関係において、日本を大切にしていかなければ相手国民が許さないよと、もっと日本に対して支持をしたらいいじゃないかというような相手国での世論にもつながってくるんじゃないかなというふうにも思うわけですね。
そういう点が余りにも我々日本は上品にやり過ぎたんじゃないかなと、もっとその辺を積極的にやっていくべきじゃないかなというふうに思うわけですけれども、草野先生辺りはそういったことに対して御意見がございましたら。


参考人草野厚君)
まず、中国に対して若干の私見を述べさせていただいた後、お答えしたいと思うんですが、中国の援助は確かにおっしゃるような問題というのはたくさんあるんですけれども、これどう解決したらいいかと。もう早急に、先ほど阿部さん言われたように、国際社会の仲間に組み入れると。つまり、OECDのDACに、OECDに加盟させるようにその道筋を付けてさしあげると。その前提として、これは安倍内閣でも議論をされているようですけれども、日中共同のプロジェクトというようなものを仕立てて、そしてお互いに、先ほど情報がよく見えないという御指摘もありましたけれども、中国がどういうことをやっているのか日本も勉強させてもらうという、こういう機会を早急につくるのがいいのかなと思っております。
御質問の点についてはこんなことを思うんですね。
御指摘の点は十分に、特に納税者の代表として国会に来られている皆さん方はそういうふうなお気持ちになるのはよく分かるんですけれども、ただ他方、日本は世界銀行から、新幹線、愛知用水、いろんなところからお金をお借りして、つまり援助をしていただいてこれだけの発展をしたわけですけれども、一体世界銀行に対して感謝したかというようなことを考えますと、余りそこは強調するのはいかがなもんかなというふうに思います。


マル激で草野氏が話した内容と若干違うので確認しておきます。
草野氏のいう「紙幣への日の丸や感謝文」は質問にはでてきません。
質問者は同じODAをしたラオスとタイで、ラオスは切手のデザインに日の丸を載せ、タイは載せなかったということを問題にしております。因みに質問者は...


 岸信夫 参議院 山口県 1期 1959年
 公式 自民党 Wikipedia Yahoo!

Wikipediaの経歴欄をみると
「東京都に政治家・安倍晋太郎・洋子夫婦の三男として生まれた(岸家に養子入りしたため現在は山口県熊毛郡田布施町に在籍)。母・洋子の実家、岸家の長男・岸信和に子供がいなかったので、岸家の養子となった。安倍晋三とは実の兄弟だが、そのことは知らずに育った。そのため、晋三との関係に気づいたのは大学進学に際し戸籍謄本を用いたときであったという。」
なんとも複雑ですが、安倍総理の弟さんなんですね。


この安倍弟に影響を与えた新聞って......やっぱり産経だったみたいです。
『 世界が感謝!日本ODA題材の切手、紙幣が続々登場 顔の見える援助の証 』
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/42471/
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/42471/slideshow/


ラオスの紙幣 ※ODA事業で造った橋をデザイン。草野氏はこれを誤解したようです。
タイとラオスの切手 ※写真下、ラオスの切手にだけ日の丸がデザイン。
パキスタンの切手
エジプトの切手


切手ごときで大喜びして金くれるなら、どこだって作るかと思います。
因みにラオス社会主義国で、言論の自由ランキングでは168カ国中156位。


言論の自由ランキング 2006年版