ブッシュよ、頑張れ!

ついでなんで、M2のお二人が前回のアメリカ大統領選前に残した発言をコピっときます。
月刊『サイゾー』2004年10月号 M2 第64回「ブッシュ、頑張れ!? 『華氏911』は左翼のオナニー映画!」
 

・・・・・
ブッシュよ、頑張れ!
宮崎
 先にも触れましたが、イラク情勢はまだまだ予断を許さないけれども、サドル派の事実上の投降で大きな節目を迎えたといえます。だからアルカイダイラクからチェチェンに戦略の重心を移しつつあるんですね。
 他方、イラクに派遣された自衛隊ですが、これを平定と看做し、オランダ軍に先んじて来春には一旦撤退の運びになるかもしれない。これはW・ブッシュ政権の存続を前提にした話で、ケリーが大統領になれば、また事情が変わるおそれもある。
 
宮台
 それは小さなことだよ。ケリーになって「ブッシュの悪」が除かれれば、晴れて心置きなく「米国のケツ舐め」ができるんで、「ケリーが米国の政策的誤謬を認めた以上、胸を張って自衛隊国際貢献しよう」ってことになり得る。まさに「噛ませ犬問題」の典型例だよ。
 実はもっと大切な問題があるんだ。現在の国際政治の不安定要因は二層に跨っている。第一層は、欧州が重大視するWTO問題で、「米国流グローバル化をルールで制約できるか否か」。第二層は、南側が重大視する構造的貧困問題で、「そのルールは南北問題の解決にも適用されるか否か」。
 ヨハネスブルグ環境開発サミットで話題になったけど、第二層を解決できない限り、怨念でテロが噴出する。でも第一層が解決しないと、先進各国は第二層どころじゃない。しかるに米国は、噴出するテロを口実に第一層で譲らない。だから第一層の解決はない。ゆえに第二層の解決もなく、よって第一層の解決はない。この悪循環をどう断ち切るかだよ。
「ストロング・アメリカ」のケリーは、第一層で欧州に譲歩するつもりはあるのか。そこがポイント。ICC問題でも地球温暖化問題でも遺伝子組み換え作物問題でもブッシュ路線を踏襲するなら最悪だ。僕らがブッシュの敗北で胸を撫で下ろさないためにもブッシュよ、頑張れ!
 
宮崎
 もしケリーが勝っても、当面は踏襲するしかないでしょう。まあ、経済政策でも、東アジア政策でも何やるのかわからないし、正体の知れてるW・ブッシュのほうがまだマシです。残念ながら。もう一期ウォーカー(・ブッシュ)にやらせて、ちゃんと後始末してもらって、旦那よりは政治家として格段と優秀そうな、ヒラリーを待つのがいいんじゃないの?(笑)
 
宮台
 あと、民主党大会と共和党大会を比べて改めて感じたのが、「デプスとセクシーさの乖離」だよ。デプスは陰影や含蓄。セクシーさは華。かつてJFKには両方あったでしょ。ブッシュは知能に問題があって(笑)、デプスにいたっては皆無。でもちょっとお茶目でセクシーなの。ケリーは上院でタフな交渉事をこなしてきただけあって、デプスはある。でもセクシーさが皆無なの。まるでJFKに大差で負けたニクソンみたいに(笑)。
 
宮崎
 で、華を添えるために副大統領候補に据えたのが、"ダミアン"エドワーズ。こないだ田嶋陽子が関西のテレビで「エドワーズって、家で奥さんを殴ってそうな顔してる」とかって放言するから、「んな、滅茶苦茶言うな!」って突っ込んだんだけど、なかなかいい直感かも(笑)。もちろん、なんの根拠もないけどね。
 
宮台
 僕は知り合いの政治家やアーティストに、「セクシーさ」と「デプス」の両方を演出するように勧めてる。小泉首相はデプスもセクシーさも乏しい。でも、ほかの政治家に比べると相対的にセクシーに見えちゃうのが日本の悲劇。「デプス皆無で、ややセクシー」な点で、ブッシュと小泉は似てるよ。デプス皆無はバカということだけど、それを望む勢力が周囲を固めている(小泉の場合は官僚たち)のも似てる。
 
宮崎
 その話は、昔M2でゴアとW・ブッシュの資質の違いを論じたときにも出た。W・ブッシュって「阿呆だけどいい奴」って思わせるところが「売り」なんだ。だから、ウォーカーは基礎教養に欠けるとか、語彙が貧弱だとか、そんなレヴェルの非難を繰り返したって限界がある。ちょっとならやってもいいけど、いつまでも鼻持ちならないリベラル・エリートどもの口真似をしてんじゃねーよ。日本人のくせに(笑)。
 
宮台
 「ニューズウィーク」によれば、過去を振り返ると、見事な演説をする大統領ほど不人気なの。「デプスがある奴ほどセクシーじゃない」という負の相関関係があるみたい。
 話を『華氏911』に戻すけど、町山智浩やおすぎがマイケル・ムーアを弁護して、「大統領選挙の結果を左右する緊急避難的な措置だからいいんじゃないか」って言ってる。でも、それは米国人だけに通用する物言い。欧州人や亜細亜人がコレでいいと思ったら自殺行為だぜ。
 
宮崎
 ムーア監督自身が、そう語っています。「これは米国人自身の手で落とし前をつけなきゃならない問題なんだ」って。ところが、米国から来た若い留学生に「『華氏911』の影響はどう?」って訊いたら、「『華氏911』を観るような子はまず選挙に行かないから、あんまり影響ないだろ」って肩をすくめてた。彼自身もデモクラットで、ケリー支持で、ムーアファンなんだけど。
 
宮台
 ブッシュ支持者で『華氏911』を観たのは3%という話もある。確かにムーアも言うように民主党支持者は人口比で6割。でも米国では有権者登録をしないと投票できない。先の大統領選、カリフォルニア州の怪しい集計でも、州知事のブッシュ弟が民主党支持者の多い低所得者有権者登録させなかったから、ブッシュがゴアと並んじゃった。『華氏911』にはブッシュ陣営を民主党支持に引き込む力はないから、唯一の可能性は、多数派を構成する民主党支持者がちゃんと有権者登録して、投票するようになること。でも、そうなる保障はない。
 
宮崎
 民主党大会後も、ほとんど支持率に変化はみられなかった。米国は、日本とは逆に無党派層や浮動票が少なくなっているといいます。そうなると、いよいよムーア監督の映画が大統領選を左右するとは考え難い。まあ、ケリー陣営も泣き所といわれた金欠病は解消したみたいだから、そこそこの勝負にはなるかもしれないけど。
・・・・・・

おかげで、平和な4年間でした・・・・・・*1
 

*1:まぁ、この二人が何を言おうが大統領選挙には全く影響ないわけですが。カリフォルニアとフロリダの区別がつかないわけですからw