精度だけの問題では・・・

 

足利事件 決め手となったDNA再鑑定(6月5日付・読売社説)
・・・・・・
事件当時は、DNA鑑定が導入されて間もないころだった。精度は今より格段に低かった。精度が飛躍的に向上したのは、新たな分析装置が導入された03年以降だ。それ以前に実施されたDNA鑑定は4000件を超えるという。
・・・・・・

「足利事件」菅家利和さん釈放 吉村警察庁長官「厳粛に重く受け止めている」
・・・・・・
事件発生当時、導入され始めたばかりのDNA鑑定で、女の子の下着から検出されたDNA型と菅家さんの型が、1,000人に1.2人の確率で一致した。
しかし、事件から19年たった2009年にあらためて行われたDNA鑑定では、検察側と弁護側、双方の鑑定人が、DNA型は一致せずとの鑑定書を提出した。
現在、鑑定の精度は4兆7,000億人に1人の確率まで向上しているという。
・・・・・・

なにか記事だけ読むと、菅谷さんと犯人のDNAが偶然一致してしまった不幸のようにも受け取れます。
もちろん、当時のDNA鑑定方法は精度は低くて、そのまま証拠として採用すること自体にも問題があったことは事実ですが、その当時の鑑定方法ですら正しく行われていなかった可能性が大なのです。

<「足利事件」とDNA鑑定>佐藤博史弁護士に聞く(2/10)
・・・・・・
 しかし、以上は当時のDNA鑑定が正しかったことを前提にした議論です。問題なのは、当時のDNA鑑定は間違っていたのではないかということです。
 科警研が行ったDNA鑑定は、MCT118と呼ばれる遺伝子の部位を対象とする鑑定法で、MCT118法と呼ばれていますが、科警研のMCT118法では誤った判定がなされる危険性があることが当時から指摘されていました。DNA鑑定を行うための基盤になるゲル(寒天のようなもの)と物差しに当たるマーカーにそれぞれ問題があったのです。
 1995年には科警研も当時の判定が間違っていたことを論文で認めました。しかし、当時の判定と正しい判定には規則性があるといい、16型は18型、26型は30型であるとしました。
 当時のDNA鑑定によれば、犯人と菅家さんのMCT118型は16-26と判定されたので、科警研の論文によれば、正しい判定は18-30だったことになります。菅家さんと犯人のMCT118型は、16-26ではなく、同じ28-30だというのです。
 しかし、弁護団が菅家さんの毛髪を用いて行ったDNA鑑定では、菅家さんのMCT118型は18-29で、18-30ではありませんでした。日大の押田茂實教授による鑑定がそれです。

ソースが見つけられませんでしたが、今回弁護側で当時の方法で再鑑定した犯人のDNAも上記の18-30では無かったと記憶してますので、当時の科警研の技術が全くデタラメだったか、もしくは科警研に提出された証拠が適切なものでは無かったと疑われても仕方がない状況なのです。
 
[追記]
当時の鑑定方法での再鑑定についての記述が日本テレビサイト内にありました。同内容は真相報道バンキシャ等の番組で放送されたはずです。

日本テレビ ACTIONプロジェクト「物証の逆襲・DNA再鑑定」
・・・・・・
再鑑定は、検察側、弁護側推薦の二人の鑑定人の手により、数通りの方法で行われたという。当時の遺留物である犯人の体液と、刑務所に収監されている菅家受刑者の血液や粘膜が資料とされた。当時と同じMCT118法でも行われ、その結果、菅家受刑者のDNA型は、なんと「18−29」。そして、犯人の型に至っては「18−24」だった。旧鑑定で一致したとされるはずの「18−30」型そのものが、完全に"消滅"してしまったのである。
・・・・・・