第四中隊陣中日誌
南京陥落後一週間企画
収録 『南京事件 京都師団関係資料集』 井口和起・木坂順一郎・下里正樹 青木書店
第十六師団歩兵第二十聯隊第四中隊
日記 P406〜409 ※カタカナ→ひらがな。誤字修正。
十二月十三日 晴 月 於南京
一、西作命*1第一六七号により午前七時三十分東南方山麓に集結し本隊となり中山門に向ひ前進す
ニ、中隊は午後一時四十分中山門より入場、西作命第一六八号に依り城内を掃蕩を実施す
三、歩兵一等兵 須川 敦
歩兵上等兵 中島定助
歩兵一等兵 瀬崎重吉
右入院中の処十二月五日退院、本日中隊に追及す
四、進士伍長以下四名火葬を終へ遺骨を奉し中隊に追究す
五、尋常糧秣として一日分を受領す
六、現在員 ニ三四名 内入院四○名
十二月十四日 晴 火 於南京
一、西作命第一七○号により午前十時より城内第二次掃蕩区域の掃蕩を実施す
敗残兵三ニ八名を銃殺し埋葬す
ニ、鹵獲兵器左の如し
品目 数量
小銃 一八○
拳銃 六○
銃剣 一一○
眼鏡 二
小銃弾 四○○○発
手榴弾 二○発
拳銃弾 五○○○発
三、歩兵上等兵 山口定一
同 中野修一
入院中の処本日中隊主力に追及す
四、尋常糧秣として二日分を受領す
五、南京錠内海軍部に於て宿営す
六、現在員 二三四名 内入院三八名
十二月十五日 晴 水 於馬群
一、西作命第一七四号により午後一時城内海軍部出発 紫金山東側地区掃蕩の目的を以て中山門を経て馬群に向ひ前進す
ニ、午後六時馬群に到着 西作命第一七五号により同地に露営す
三、滋野上等兵以下十二名（内入院二名）水上輸送隊より帰隊す
四、部隊衛兵として畑上等兵以下十六名服務す
五、尋常糧秣として三日分受領す
六、現在員 二三四名 内入院四○名
十二月十六日 晴 木 於硝石村
一、西作命第一七六号により南京東側地区掃蕩のため午前七時三十分露営地出発、硝石村に向ひ前進す
ニ、午前十一時硝石村に到着 別紙の如く中隊命令を下達し配備を完了す
中隊命令 十二月十六日午前十一時十分 於硝石村
一、情報に依れは南京東側地区には敗残兵多数あるもの、如し
二、中隊は（第一小隊欠）大隊命令に基き現在地附近に位置し聯隊主力の掃蕩により敗退する残敵を捕捉殲滅せんとす
三、第二小隊より小銃一分隊を以てあの高地を占領し警戒すへし
四、第三小隊より小銃一分隊を以て今来た道路三叉路附近に位置せしめ警戒すると共に第一小隊の誘導に任すへし
尚小銃一分隊を以てあの前の高地鞍部附近に位置し警戒せしむへし
五、爾余の部隊は現在地附近に位置して待期すへし
六、余は中隊主力の位置に在り
中隊長 坂 中尉
下達法 各小隊長に口達す
三、午後六時第一小隊中隊主力に追及す
四、歩兵上等兵 木村準
入院中の処衛生隊にて死亡す（十二月五日）
五、現在員 二三三名 内入院三九名
十二月十七日 晴 金 於白水橋
一、西作命第一七八号による配備につくへく午前八時三十分露営地出発白水橋に向ひ前進す
午前○時二十分白水橋着同地付近の警備に任す
ニ、西作命第一七八号により第一小隊を南京城内に派遣し宿営準備及糧秣其の多物件の監視に任せしむ
三、志賀上等兵以下五名兵站部勤務より皈隊す
四、歩兵少尉 松尾竹雄
歩兵上等兵 米田栄太郎
右の者本日退院帰還す
五、部隊衛兵として直下上等兵以下拾名服務す
六、現在員 二三三名 内入院三七名
十二月十八日 晴 土 於白水橋
一、西作命第一八○号により白水橋西北方地区掃蕩のため大西伍長以下二十一名午前八時三十分出発、午後○時二十分皈隊す
ニ、歩兵一等兵 湯浅喜代治
入院中の処十二月五日退院、本日中隊へ復帰す
三、勤務員左の如し
１、日直将校 大槻曹長
同下仕官 前原伍長
同上等兵 増田上等兵
同 山下上等兵
２、部隊衛兵として栗林上等兵以下九名服務す
四、尋常糧秣として二日分受領す
五、現在員 二三三名 内入院三六名
十二月十九日 曇 日 於白水橋
一、南京城内設営のため河北伍長以下二十六名午後二時宿営地出発先行す
ニ、勤務員左の如し
１、日直将校 田中少尉
同下士官 平井伍長
同上等兵 下林上等兵
同 神田上等兵
２、部隊衛兵として畑上等兵以下九名服務す
三、現在員 二三三名 内入院三六名
解説 P509
歩兵二十聯隊第四中隊の公式戦闘記録である。南京攻略に参加した各部隊の戦闘詳報類の多くが消却処分されている中で、捕虜虐殺事実をも明記し中隊の日々の行動を記録した、二十聯隊関係で現存するただ一つの公式陣中日誌といえよう。
この日誌は、南京攻略当時の第四中隊長・坂清中尉が、中国北部転載のさい、転任にともない前線より持ち帰り、戦後、東京・大田区の自宅に保存していたものといわれる。
*1:西作命：西崎部隊・第一大隊・作戦命令の略
