日本の国益と名誉を守る

 
日本のデンパ保守界隈が、『 The Facts 』をやらかしちゃった直前に
新しい歴史教科書をつくる会の機関紙『史』で行われた鼎談です。
現在のつくる会会長であらせられる藤岡信勝*1さんを司会に、松原仁稲田朋美という与野党を代表する自称真正保守議員が参加しております。
しかし、確信犯の藤岡さんは別にして、残りの二人は、実は「河野談話」や南京事件に関する概説書をまともに読んだことないのかも知れませんねぇ。

鼎談
慰安婦・南京 
日本の国益と名誉を守る
アメリカの慰安婦決議案と「南京事件」にどう対応すべきか
衆議院議員 松原仁*2
衆議院議員 稲田朋美*3
拓殖大学教授・副会長 藤岡信勝*4
 
河野談話の見直しが先決
 
藤岡
 ご存知の通り、昨年十二月にいったん廃案になったにもかかわらず、今年の一月三十一日また「日本は若い女性を強制して性的奴隷である慰安婦とした事を認めて謝罪すべき」という趣旨の決議案一二一号がアメリカ下院の外交委員会に出されて問題化しています。また昨年末、南京事件について十本ほどの大虐殺映画が世界中で公開されることが明らかになり、これもまた大きな問題となっています。
 この南京と慰安婦というのはいわば飛車角のような日本叩きの二大テーマとなっていて、反日包囲網のような雰囲気がでてきていると思うんですが、そのあたりの状況についてどのように受け止めているのかをまずお聞きします。稲田先生からどうぞ。
 
稲田
 この南京と従軍慰安婦はどちらも国家の名誉がかかっている問題で、今まで日本は自分の国家の名誉を守るということについてあまりにも意識が低すぎて、藤岡先生はじめ民間の学者の活動や、裁判等で細々と国家の名誉を守ろうとしてきたのですが、それではもう太刀打ちできないような状況に陥っています。日本の国家の名誉を貶めることが、自分たちの国益に合致するという国があるからです。
 具体的には中国ですけれども、その中国が日本の国家の名誉を貶めるために、国を挙げて戦後補償裁判などに取り組んでいます。中国は南京戦以来、戦略として自国に有利なように宣伝戦をやってきていて、それに対しあまりにも日本は脇が甘かったということのツケが今回回ってきました。ただ、ピンチはチャンスなので、この機会にそのことをきちんと認識すれば、国家の名誉を守ることがいかに大切か、それを国の組織として取り組むように見直すことができれば、反対にチャンスになるかなと思っております。
 
藤岡
 政党は違いますが、やはり同じ問題意識を共有されている松原先生はいかがですか。
 
松原
 この問題は、やはり国益をかけてきちっと対決しなければなりません。昔から「衣食足りて礼節を知る」と言います。衣食というのは経済的な反映ですから、衣食が満ち足りた礼節、つまり名誉であるとか誇りであるとか、精神的な部分が後に来る。後に来るというより、それが前提案件であって、目的はそこにある。この諺から見てもわかるように、国益の最大の要素だと思っています。
 ただ問題は、慰安婦問題や南京問題という情報戦に対してこれまで日本の政府がなんら反撃してこなかったことです。どうして言い掛かりをつけるのかと主張することも必要ですが、今までこの情報戦に対して何もしてこなかったことの総括を同時にやらなければ、この問題の根本的な解決にはならない。稲田さんがおっしゃるように、確かにピンチはチャンスですが、ピンチはピンチですから、国内にも敵がいることを含めて国民的な合意を成立させ、勿論、アメリカの世論は世界の世論ですから、そこに対しても働きかけるニ正面作戦でやらなければ追いつかない。
 
稲田
 ただ、これまで曖昧な決着をつけようとしてきたことのツケというのか、この従軍慰安婦問題についても、河野談話を引っくり返すべきだと主張すると、保守派の中にも、それを今やることは得策ではなく、かえって逆効果だと言う方も結構いて、敵というよりも味方ですから、閉塞感を覚えています。
 
松原
 慰安婦の強制連行が実際あったかなかったかといえば、なかった。石原信雄さん(当時の官房副長官)もそのことは言明している。なかったけれども、すみませんでしたと認めて頭を下げればこの話は水に流して、次のステージに行くという、極めて安直な日本的な感性で決着したことが、結局今日の問題に至っていることを考えると、外交は日本的感性でやってはいかんということです。
 
藤岡
 河野談話を出したのは、とにかく強制連行を認めてくれれば、後はもう問題にしない、お金の請求もしない、補償は韓国政府がやるからという話だった。それに謂わば騙されたというか・・・・・・。
 
松原
 騙されたんです。
 実は、一九世紀末と二○世紀初頭に、オスマン帝国時代のトルコでアルメニア人に対する迫害事件があり、アメリカがこれをトルコ国家による組織的虐殺とみなして、アルメニア人虐殺法案を議会にあげようとしたことがありました。これまたどんでもない話で、アルメニア人虐殺があったかなかったかという問題もありますが、とにかくオスマントルコ時代のことで法案を出すなんていうのは時代錯誤ですね。だったら、原爆や東京大空襲についてアメリカは謝罪したのかということになる。
 
稲田
 インディアンの虐殺はどうなったとかもね。
 
松原
 そういう話になる。それに対してトルコは、それをやるんだったら、アメリカ軍にトルコ領内の基地を使用は止めさせるというところまでいって、しかも、トルコ政府はこの問題にかかわっているアメリカの議員一人ひとりに面接して、事実は違うと説得しているというんです。トルコ政府はそれをやっている。そうしますと、なぜ日本政府はやらないんだとなる。
 
稲田
 それは河野談話を認めているからですよ。
 
松原
 だから、河野談話を否定しないと話は進まない。
 
藤岡
 河野談話は否定しない限り問題の解決はないんですよ。
 
稲田
 河野談話は、強制性を認めたととるのだ普通の読み方だと思います。そうすると、河野談話を引き継いだ上で、今のアメリカの決議案は客観的事実と違うと言う、慰安婦は二十万人ではなかったと言いたいのかとか、そういう程度の差の問題になってしまいます。そうではなく、質的に強制連行はなかった、日本は北朝鮮と違ってて国家として若い女性を連れてきた事実はなく、その女性たちを性奴隷にしたという事実もないという主張をするためには、河野談話を引き継いでいる限りできないんです。そもそも「性奴隷」という言葉自体も問題です。
 
藤岡
 安倍総理が広義の強制はあったかもしれないが、狭義の強制はなかったと言ったが、あれは外国にはまったく説得力がないんです。だけど、我々が聞いていると何が言いたいのか分かるわけです。
 
松原
 分かる、分かる。
 
稲田
 強制連行なんてなかったって言いたいんですよね。
 
藤岡
 広義と狭義というのは、実は九七年の三月三十一日に朝日新聞が見開き二面で慰安婦問題の総括をしていて、そこで使った論理なんです。だから、安倍総理朝日新聞の論理を逆に使って、広義は認めても狭義の方はなかったことを強調したかったのでしょうが・・・・・・。
 
松原
 稲田さんが言うように、河野談話の決着は政治の話なんです。
 
藤岡
 マイク・ホンダも、テレビで問い詰められて「河野談話があるじゃないか」と応えたように、最後はそこしかない。
 
稲田
 謝罪しているんだから、あったんだとなります。
 
松原
 だから、まず日本政府が河野談話を継承しないという姿勢を打ち出すのと、河野談話を見直せば次は南京の問題になるわけだから、南京の問題だって実際はどうだったのかを明らかにして、同時に、アメリカに対してきちっと取り組むために国会議員をあげて、与党も野党もなくやらなければいけないと思うんです。
 
稲田
 総理も広義の強制、狭義の強制と言われるのであれば、広義の強制にしても本当は謝ってはいけなかった。不幸な時代の不幸な出来事で非常に遺憾に思う。しかし、国による強制連行は なかったので謝罪はできない。河野談話は謝っているという線で表明した方がよかった。
 
松原
 それでいいんだよ、それを言ってもらえればいいんだよ。
 
稲田
 河野談話を引き継いでいながら狭義はないとなると、矛盾してくる。
 
松原
 安倍総理も歴史に名前を残す総理を目指すなら「生中生なく死中に生あり」で、やはりここはつっぱるべきです。
 
■七十年経っても今また「南京」
 
藤岡
 それでは次に、南京問題について話を聞かせてください。
 南京もまさに情報戦で、しかも起こった当時から情報戦で、それが未だに延々と続いています。これは効果があるということで、日本に対する最大の攻め道具となっています。だた、この十年間でかなり研究が進み、まずはっきりしていることは、民間人虐殺なるものは限りなくゼロで、なかったと言っていいということがはっきりしてきました。ただ、先般の高校教科書検定では、文科省の多様な意見をというのを逆用して、白表紙にはなかったのに後で三十万という数字を入れた教科書が出てきましたので、検定では一歩後退しています。
 
松原
 南京と慰安婦というのは、日本人の名誉を永久になくさせるための原子爆弾みたいなものです。これらが嘘だということを、国会でやってもなかなか報道されませんから、デモ行進を行うとかそれぐらい意表をついた行動をしないとマスコミは注目してくれません。例えばトルコがやったように、日本の国会議員も、アメリカに行って議員一人ひとりに面接して、南京では虐殺なんてなかったとやらないと、話にならないんじゃないかと思います。
 
稲田
 南京攻略戦の時に、国民党の国際宣伝処の顧問をしていたティンパーリというイギリス人記者が、日本を貶めるため『戦争とは何か』を書いて宣伝していたのですが、その時ですら日本は脇が甘かった。それを七十年経って今また同じことをやられています。当時の歴史に学ばずに今回見過ごしたら、もう直すことは不可能ではないでしょうか。
 
藤岡
 そうだと思います。だからこそまさにニ○○七年問題だと思っていて、今年から来年の北京オリンピックまでの期間、これが勝負ですよ。
 
松原
 私が大変尊敬し、また薫陶もいただいた末次一郎さんが沖縄返還の時に使った手法ですが、日本とアメリカの学者を集めて勉強会を立ち上げ、それでアメリカの学者から米国政府に、日本に沖縄を返還してもいいのではないかと言わせた。アメリカはそれが成功する国ですので、一考に値する方法ではないかと思います。
 もう一点は、これまでアメリカが全ての情報の発信源だったのですが、これからはEUがそういうふうになってきますので、その対応が大事になってきます。例えばスペインは親日国で、今まで東洋人の言語では日本語しか書かれていなかったのに、最近になって中国語が書かれはじめた。つまり、中国は大事なところに着々と手を伸ばしているということです。
 
稲田
 実は、従軍慰安婦などの戦後補償裁判は十件ほど起こされ、そのうち六件が事実認定されている。つまり、国家無答責であるとか時効だとか、政府は単に勝てばいいということでやってきたことで、例えば単に勝てばいいということでやってきたことで、例えば南京大虐殺だったら、判決で大虐殺を否定することはできないと書かれて事実認定されてしまうと定着してしまいますので非常にまずい。これは国家の名誉を守るという方針が立っていないからで、今後は国家の名誉を守るという訴訟方針を立てて法務省にも頑張ってもらいたい。
 
藤岡
 本当にそうです。昨日、外国特派員協会で北村稔さんの『南京事件の探求』が英訳されたことで記者会見があったんですが、司会者が冒頭で日本の最高裁の判決を引用して説明していました。大体そういうふうに使われてしまう。ただ、やはりこれからは海外に発信することは非常に大事だと思います。あらゆる機会を捉えてやる必要があると思っています。
 
稲田
 政治家は国民の生命、身体、財産、領土を守ると同時に、国家の名誉を守るというのも大きな使命だし、美しい国日本、世界から尊敬される国というのであれば、国家の名誉を守るために国の組織をつくらなければなりません。やはり今年が勝負だと思います。
 
松原
 私はむしろ今年から勝負が始まると捉えていまして、長い間の生活習慣病みたいなものですから、目前目下の火の粉を振り払いながら、大局的に、今年から学者同士の勉強会をスタートするとか、そういうことも含めてやらなければと思っています。ただ、目下の急務として、河野談話の否定だけはやっておいて欲しいですね。
 
藤岡
 ありがとうございました。これで終わらせていただきます。
 
(4月4日取材)