ビッテル神父

 

以前のエントリーでも扱いましたが、靖国神社を救ったとされるブルノー・ビッテル神父に関して、元ネタとそれを引用したと思われる文章を集めてみました。
[追記:20080905]靖国神社と日本人(小堀桂一郎)、別冊正論座談会、戦争を知らない人のための靖国問題(上坂冬子)を追記しました。
 
元ネタは1973年に朝日ソノラマから出版された
マッカーサーの涙―ブルノー・ビッテル神父にきく』 P117-119

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 ビッテル神父は、マ元帥配下の将校たちの単純な発想は、護国神社が全廃されればキリスト教会の発展は容易になるから、キリスト教会は喜ぶだろうという確信にあり、マ元帥とウイロビーはそれを逆用して、キリスト教会の答申によって決定するという条件を出したにちがいないと推察していた。
 その線にそって、バーン師ほか数人の神父たちと意見を交わし、同意を求めた。出席者は少数だったが、みなそれまで各派の意見聴取をしており、結論はただちに出た。
 自然の法に基づいて考えると、いかなる国家も、その国家のために死んだ人びとに対して、敬意をはらう権利と義務があるといえる。それは戦勝国か敗戦国かを問わず、平等の真理でなければならない。無名戦士の墓を想起すれば、以上のことは自然に理解できるはずである。
 もし靖国神社を焼き払ったとすれば、その行為は米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって残ることであろう。歴史はそのような行為を理解しないにちがいない。はっきりいって、靖国神社の焼却、廃止は米軍の占領政策と相容れない犯罪行為である。
 靖国神社国家神道の中枢で、誤った国家主義の根元であるというなら、排すべきは国家神道という制度であり、靖国神社ではない。我々は、信仰の自由が完全に認められ、神道、仏教、キリスト教ユダヤ教など、いかなる宗教を信仰するものであろうと、国家のために死んだものは、すべて靖国神社にその霊をまつられるようにすることを、進言するものである。
 ビッテル神父は約束通り翌日の午前十時までに、マ元帥覚え書に対する答申書をウイラー副官に渡した。
 靖国神社の招魂祭は予定通り、十一月二十日に挙行され、天皇陛下は無事参拝を果たした。「国教の分離」に関する総司令部指令が発布されたのは、十二月十五日である。
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引用されている箇所を太字にしてみました。
とくに注目する点は以下の箇所です。
靖国神社国家神道の中枢で、誤った国家主義の根元であるというなら、排すべきは国家神道という制度であり、靖国神社ではない。
 
以下に時系列で上記文章の引用箇所を抜粋していきます。
靖国』1981年7月1日号 P5

靖国神社ブルノー・ビッテル神父 木山正義(財団法人水交会会長 元海軍中佐(機40期))
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これに対する答申の要旨は次のとおりであった。
『答申の要旨』
自然の法に基ずいて考えると、いかなる国家も、その国家のために死んだ人びとに対して、敬意をはらう権利と義務があるといえる。それは、戦勝国か、敗戦国かを問わず、平等な真理でなければならない。無名戦士の墓を想起すれば、以上のことは自然に理解出来るはずである。
 もし、靖国神社を焼き払ったとすれば、その行為は、米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって残ることであろう。歴史はそのような行為を理解しないにちがいない。はっきりいって、靖国神社を焼却する事は、米軍の占領政策と相容れない犯罪行為である。
 靖国神社国家神道の中枢で、誤った国家主義の根元であるというなら、排すべきは国家神道という制度であり、靖国神社ではない。我々は、信仰の自由が完全に認められ神道・仏教・キリスト教ユダヤ教など、いかなる宗教を信仰するものであろうと、国家のため死んだものは、すべて靖国神社にその霊をまつられるようにすることを、進言するものである。
 以上のような要旨の答申をマッカーサー総司令官の副官H・B・ウイラー大佐を通じてマ元帥に回答した。
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問題の箇所はちゃんと引用されてますね。
 
日本の息吹』 1997年8月号 P12

靖国神社を守ったキリスト教神父 宇佐美寛(団体役員)
これに対するビッター神父の回答は次の通りであった(要旨)
《自然の法に基づいて考えると、いかなる国家もその国家のために殉死した人々に対して、敬意を払う権利と義務があるといえる。それは、戦勝国か戦敗国かを問わず平等の真理でなければならない。もし、靖国神社を焼き払ったとすれば、その行為は米軍の歴史にとって不名誉きわまりない汚点となって残るであろう。歴史はそのような行為を理解しないにちがいない。
 はっきりいって、靖国神社を焼却することは、米軍の戦略政策と相いれない犯罪行為である。我々は信仰の自由が完全に認められ、神道・仏教・キリスト教ユダヤ教など、いかなる宗教を信仰する者であろうと、国家のために殉じた者は、すべて靖国神社にその霊を祀られるようにすることを進言するものである》
 この勧告によりマッカーサー靖国神社の焼き払いを中止し、同年十一月二十日の大祭は従来どおり行われ、天皇陛下もご親拝されたのである。

「要旨」と称してカットしてますね。参考文献として木山氏の論文が記載されております。
   
靖国神社と日本人』 小堀桂一郎 1998年7月 P131-132

靖国神社焼亡の計画
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その時の同神父による答申の要旨を水交会の会長を務めておられた木山正義氏が、神社の社報『靖国』の昭和五十六年七月号紙上に紹介している。

 自然の法に基づいて考えると、いかなる国家も、その国家のために死んだ人びとに対して、敬意をはらう権利と義務があるといえる。それは、戦勝国か、敗戦国かを問わず、平等の真理でなければならない。無名戦士の墓を想起すれば、以上のことは自然に理解できるはずである。
 もし靖国神社を焼き払ったとすれば、その行為は米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって残ることであろう。歴史はそのような行為を理解しないにちがいない。はっきりいって、靖国神社を焼却する事は、米軍の占領政策と相容れない犯罪行為である。
 靖国神社国家神道の中枢で、誤った国家主義の根元であるというなら、排すべきは国家神道という制度であり、靖国神社ではない。我々は、信仰の自由が完全に認められ、神道、仏教、キリスト教ユダヤ教など、いかなる宗教を信仰するものであろうと、国家のために死んだものは、すべて靖国神社にその霊をまつられるようにすることを、進言するものである。
 以上のごとき要旨の答申が副官H・Bウイラー大佐を通じてマッカーサー将軍に送達され、将軍はこの答申を尊重して靖国神社焼却には中止の命令を発した。
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田中正明本に推薦文とか書いちゃうコボリン。ちゃんと引用しています。
因みにこの本は、よしりん先生漫画本の参考文献にも含まれております。
 
靖国』 1999年11月1日号 P4 

ドイツで紹介した靖国物語 名越ニ荒之助
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 覚え書を受け取ったヴィテル神父は、数人の神父たちと意見を交わし、結論は直ちに出ました。その趣旨は、「戦勝国か敗戦国かを問わず、国家のために命を捧げた人に、敬意を払うのは、自然法の原則である。もし靖國神社を焼き払ったとすれば、その行為は米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって残るであろう。靖國神社の焼却、廃止は、米軍の占領政策に相容れない犯罪行為である」というものでした。神父は約束通り翌日の午前十時までに、覚え書に対する答申書を提出したのです。
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・・・「朝日ソノラマ」の衣奈社長は、後世のためにも残しておかねばならないと思いたちました。やっと神父の了解をとりつけ、前後五回にわたって、毎日三時間づつ口述して貰い、一冊にまとめたのが、『マッカーサーの涙 - ブルーノ・ビッテル神父にきく』(昭和四八年刊、ニ三八頁)です。本稿もその中の要約であることを、付記しておきます。
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アインシュタイン云々で有名な名越さんですが、引用箇所を問題箇所の前までに留め、正確な引用文献を記してます。
 
靖国神社WEBサイト「今月の遺書」2002年7月1日

靖国神社を守った神父
 
 自然の法に基づいて考えると、いかなる国家も、
その国家のために死んだ人びとに対して、敬意を
はらう権利と義務があるといえる。それは、戦勝国か、
敗戦国かを問わず、平等の真理でなければならない。
無名戦士の墓を想起すれば、以上のことは自然に
理解出来るはずである。  
 もし、靖國神社を焼き払ったとすれば、其の行為は、
米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって
残ることであろう。
 歴史はそのような行為を理解しないにちがいない。
はっきりいって、靖国神社を焼却する事は、
米軍の占領政策と相容れない犯罪行為である。

(中略)

 我々は、信仰の自由が完全に認められ神道・仏教・
キリスト教ユダヤ教など、いかなる宗教を信仰する
ものであろうと、国家のため死んだものは、
すべて靖国神社にその霊をまつられるように
することを、進言するものである。
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(社報「靖国」昭和56年7月号掲載、財団法人水交会会長・木山正義氏の玉稿『靖国神社とブルノービッテル神父』より要約抜粋)
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都合の悪い部分を隠す典型例ですね。
 
産経新聞』2002年8月13日(火) 11面

靖国代替施設」は要らない ノンフィクション作家(ドイツ在住)クライン孝子
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靖国」の危機救った独人
 その険悪ムードのさなか、当時駐日ローマ法王代表バチカン公使代理だったピッテル神父が、占領統治の最高司令官マッカーサーに、「いかなる国家も、その国家のために死んだ人びとに対して敬意をはらう権利と義務がある。もし靖国神社を焼き払うとすれば、その行為は米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって残ることであろう。歴史はそのような行為を理解しないに違いない。我々は、国家のために死んだ者は、全て靖国神社にその霊をまつられるべきとする」と強く進言した。
 ちなみに、この進言で靖国神社の危機を救った神父は、ドイツ人である。彼は第一次世界大戦の勇士で陸軍中尉、敗戦後聖職の道を選び昭和九年から日本に滞在していた知日家。日本と同様第二次大戦において祖国が敗戦の憂き目に逢ったなか、敗戦国の国民である前に、神に仕える謙虚な一人の人間として、勝者に向かい毅然としてこのような勇気ある発言を行い靖国神社を救った。本来ならその恩義に報い、手篤く靖国神社を遇するのが日本人としての義務であり筋道ではなかろうか。
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まぁ孝子センセイに何か期待するのは無理でしょう...
 
産経新聞』2002年8月16日(金) 7面

ある神父の「愛と良識」 女優 村松英子
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 敗戦直後の日本で、靖国神社を救ったのは、一人の偉大なカトリックの神父様でした。
 日本に進駐した連合軍司令部では、靖国神社を「焼却すべし」という意見が多かったと聞きます。しかしマッカーサー総司令官はさすがに、結論を出す前に、キリスト教会の意見を聞くことにしたそうです。
 その時、駐日ローマ法王庁バチカン公使代理のビッテル神父様の答えが靖国神社を救いました。
 もし靖国神社を焼き払えば「その行為は、米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点を残すことになるであろう。歴史はそうした行為を理解しない」という内容に続けて、そんな行為は「犯罪行為である」と言われたのです。
 ビッテル神父様は「いかなる国家も、その国家のために死んだ人に対して、敬意を払う権利と義務がある」「それは戦勝国か敗戦国かを問わず、平等の真理でなければならない」という意味のことを、言っておいでです。「無名戦士の墓を思えば、自然に理解できるはず」と。欧米の無名戦士の墓所は有名ですが、キリスト教国では常識です。だからこそ、マッカーサー総司令官をはじめ、連合軍司令部は「常識」を呼び覚まされて、その結果、靖国神社は保存されました。
 また、神父様は、信仰の自由の中で、どんな宗教を信仰する人であろうと(それぞれのお葬式の形式と別に)国のために死んだ人は、靖国神社で追悼されるように、との進言もなさったようです。
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ちょっと存じ上げないのですが、女優さんだそうです。
コメント欄で通りすがりさんにご教示いただきました、村松英子という女優さんです。
 村松英子 - Wikipedia
 
日本の息吹』 2005年10月号 P11〜12*1

ドイツのリーダーの勇気に学べ クライン孝子(ノンフィクション作家)
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 一つは、靖國神社GHQによって焼き払われそうになった時のことです。「靖國神社を焼き払ったとすれば、その行為は、米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって残ることであろう。いかなる宗教を信仰するものであろうと、国家のために死んだものは、すべて靖國神社にその御霊を祀られるようにすることを進言する」と仰ったのは、ドイツ人のローマ教皇庁代表兼バチカン代理公使のブルーノ・ビッター神父でした。私は、日本国民に代わって、はっきりと意見を述べたドイツ人神父を尊敬しております。
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バカ孝子センセイのお気に入りのネタみたいですね。
 
靖国と日本人の心』正論8月臨時増刊号

座談会「日本人として護るべきもの、語り継ぐべきこと」

靖国神社宮司 湯澤 卓
東京大学名誉教授 小堀桂一郎
弁護士 稲田朋美
司会/産経新聞論説委員 石川水穂
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石川
なぜ、アメリカは靖国神社にそれほど敵意をもったのですが。
 
小堀
日本軍の強さが怖かったからです。例えば、アメリカ軍は昭和二十年二月十九日、硫黄島に強襲上陸しました。当時は五日で占領できると踏んでいたところ、実際には七倍の三十五日もかかりました。しかも、アメリカ軍の戦死傷者は日本の玉砕による死者数を上回りました(守備隊の九割以上、二万一千名戦死。米軍の戦死約六千八百名、戦傷約一万九千名)。アメリカ軍の心胆を寒からしめた戦いだったと思います。また、沖縄本島には四月一日に上陸し、終結までに三ヵ月近く要しました。アメリカは、あの日本人の旺盛な敢闘精神は一体どこから出てくるのかと考えたのです。その答えが「国体護持の一念で、死ねば靖国神社に祀ってもらえるという安心感から彼らはあのように勇猛果敢に戦えるのだ、だから恐ろしいのは靖国神社だ」というものだったらしい。そこで靖国神社を目の仇にしたのです。
 
石川
そこで、靖国神社焼却計画が出てくるわけですね。
 
小堀
ええ、靖国神社を焼き払ってしまえと。そうして、日本人の戦意を砕いてしまおうとした。ですが、その計画を上智大学教授だったブルーノ・ビッテル神父(元上智学院学院長)に諮問したところ、たしなめられます。「もし、靖国神社を焼き払ったとすれば、その行為は米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって残るであろう。いかなる宗教を信仰するものであろうと、国家のために死んだものは、靖国神社にその霊をまつられるようにすることを進言する」。この道理に、さすがのGHQ(連合国軍総司令部)も承服したんだと思います。
 
稲田
神父さんは「自然の法に基づいて考えると、戦勝国か敗戦国かを問わず、いかなる国も、その国のために死んだ人に対して敬意をはらう権利と義務がある」とも言われています。全くその通りだと思います。
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対談の中での引用ですから、しかたが無い面もありますが。その前のコボリン発言「日本軍の強さが怖かった〜」は、まさに「誤った国家主義の根元」としか言いようがない。
 
戦争を知らない人のための靖国問題』 上坂冬子 2006年3月 P25

靖国神社の位置をきめた占領軍
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 占領軍側からは、靖国神社伊勢神宮明治神宮を償却する案などもでたという。神社側としてはこれを避けようと、境内の一部を娯楽施設のある「歓楽郷」にする案まで考えた。だが戦後に駐日ローマ法王代表を務めたドイツ出身のブルノー・ビッテル神父が、マッカーサー元帥から靖国存続の是非を聞かれて、
「もし、靖国神社を焼き払ったとすれば、その行為は米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって残るであろう (中略)。いかなる宗教を信仰するものであろうと、国家のために死んだものは、すべて靖国神社にその霊を祭られるようにすることを、進言する」
 と答え、マッカーサーがこれを受け入れたといわれている(『やすくにの祈り』)。
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まぁ、ご高齢ですからね…

 
 
そういえば、ネトウヨさんたちが大好物のよしりん先生も引用してましたよ!
新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論 (2)』 2001年11月15日 P251 *2
新ゴーマニズム宣言SPECIAL 靖國論』 2005年8月1日 P47

初出は靖国WEBサイトよりも早いのですね。*3
ま、内容は予想通りって感じでw
 
 

*1:2005年8月15日に靖国神社で行われた「終戦60年国民の集い」での講演をまとめたものです。

*2:参照用

*3:気が向いたら戦争論(2)の参考文献を調べてみることにします。