南京映画上映妨害


今年期待の映画といったら、なんといってもブル聯隊長水島総監督『南京の真実』!
残念ながら、昨年内の完成は実現できず。劇場公開の見込みもたってないのですが...
とりあえず一映画ファンとして公開を気長に待ちたいと思います(適当)。



で、それに絡んで笠原十九司著『南京事件論争史』を読んでいて気になった箇所を引用します。強調は引用者。

P238〜241
映画「南京1937」上映妨害
 映画「南京1937」*1は、一九九五年に中国で製作された南京大虐殺をテーマにした劇映画で、監督は呉子牛。女優早乙女愛が主人公の中国人医師の日本人妻を好演した。日本人を糾弾するのでなく、中国人と日本人の人間としての「和解」へのメッセージをこめた映画で、中国では「日本人に甘すぎる」、告発性が弱いと批判があった。しかし、そのような映画でも、日本で一九九八年から、劇場公開を始めたところ、六月に横浜で右翼が上映中のスクリーンを切り裂く事件が発生、街宣車が執拗に妨害活動をしたために、中途で上映を打ち切らざるをえなくなった。早乙女愛には右翼から脅迫があり、ボディガードを雇わざるをえなくなったという。さらに彼女はその後日本の映画界からは冷遇されたという話も聞く。
 以後、一般映画館での上映は困難になり、全国で市民団体が中心になって、公共施設を会場にした上映会を実施したが、各地で右翼勢力が妨害活動を繰り広げた。千葉県柏市などでは市当局に会場を使用させないように圧力をかけ、妨害に成功している。一九九九年一○月に山形市で市民が企画した「『南京1937』講演と映画のつどい」に、私は講師として呼ばれたが、「南京事件の真相を考える山形県民の会」が中心になって、市当局に会場不許可を迫る脅迫まがいの圧力をかけた。山形市当局の姿勢がしっかりしていたので、上映会は実施されたが、講師の私は機動隊に守られ、市の職員が会場を厳重に警備するなかで講演をおこなった。「南京事件の真相を考える山形県民の会」は上映会の成功にたいする「反撃」として、ニ○○○年一月に東中野修道の講演会を実施した。
 
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漫画「国が燃える」削除・修正事件と小林よしのり
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新しい歴史教科書をつくる会」の機関誌『史』(11月号)は、さっそく阿羅健一「南京事件を無知と歪曲で描いた本宮ひろ志の愚考」を掲載、「『国が燃える』の休載は当たり前」と、右翼活動かの西村修平らの集英社への圧力を「成果」として礼賛した。阿羅は、西村らが六年前に、映画「南京1937」を「公共施設を映写場として貸与することを撤回させたことがある」とたたえている。
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阿羅健一氏が、南京事件を扱った映画の上映妨害を肯定しているという、気になる記述。
問題の記事はつくる会のホームページに残ってました。
丸々引用。強調は引用者。

南京事件を無知と歪曲で描いた本宮ひろ志の愚行
集英社「週間ヤングジャンプ」の連載漫画「国が燃える」の休載は当たり前
ジャーナリスト 阿羅健一
 
■救済措置は常識的な幕引き
 南京大虐殺が描きだされて三回目、連載漫画「国が燃える」の休載が決まった。
 南京大虐殺を事実だとするその描き方から、休載は当然だと考える人がいれば、のらりくらり最後まで言い逃れするだろうと予想していた人もいて、彼らにとって休載は拍子抜けだったようだ。確かに拍子抜けした人がいて、しかも彼らの方がはるかに多かったけれど、振り返ってみれば、休載は当たり前で、常識的な幕引きであったといえよう。
 「国が燃える」が「週間ヤングジャンプ」に連載されたのは二年前。著者の本宮ひろ志は、「俺の空」や「サラリーマン金太郎」などで熱血漢を描き若者の間に人気を得ている漫画家。今回の「国が燃える」では、社会の悪と戦う男を、昭和という時代を背景に描いていた。「週間ヤングジャンプ」は、毎週百数十万部が発行されていて、大学生や若者に人気がある漫画週刊誌であることは言うまでもない。
 昭和初期の国や軍部が悪として描かれてきて、九月二十二日発売号では、昭和十二年冬にいたった。
 そこから南京大虐殺が描かれだす。正義に燃える若者の前には、立ちはだかる巨大な悪がなければならない。これまでの流れとこれからの展開から「国が燃える」は南京大虐殺を悪として描かざるを得ないのだろうが、そこに描かれている南京大虐殺は歪曲と無知から成っていた。
 たとえば歪曲とは、法廷の被告席に立つ松井石根大将が、「南京事件ではお恥ずかしい限りです・・・私は皆を集めて軍司令官として泣いて怒った・・・私だけでもこういう結果になるという事は当時の軍人達に一人でも多く深い反省を与えるという意味で大変に嬉しい・・・」と語る場面である。
 中支那方面軍の司令官であった松井石根大将は、東京裁判南京大虐殺の責任を問われ絞首刑の判決が下された。その松井大将が南京大虐殺を認めたと描かれたのである。
 それは事実だろうか。
 昭和十二年八月、松井大将の率いる日本軍は上海に上陸した。それから半年間、中支の日本軍を率いて戦うのだが、松井大将が軍紀に厳しかったのはよく知られている。苦戦した上海でもそうだったし、南京攻略を前にしても軍紀厳正を十万の日本軍にもとめた。日本軍が南京を陥落させたとき、何件からの不祥事が起き、その報告が大将まで届けられた。報告は松井大将にとってきわめて衝撃で、大将は激怒した。大アジア主義者であり、日中親善を念願としていた大将だから、数件ほどの不祥事にも心をいためたのである。
 敗戦となって突然事件の責任を問われるのだが、南京で事件らしきことの報告は受けたことがなく、責任を問われるようになってからも事件が起こったとは思っていない。「国が燃える」に引用されている言葉は、処刑の直前に松井大将が教戒師に、南京で受けた報告に対する自分の気持ちを述べたものである。
 
 この言葉は、どんな事件でも無視することなく、軍紀にはきわめて厳しかった松井大将を示しており、むしろ松井大将を賞賛すべきときの言葉である。
 このような言葉を、法廷で述べたように記述し、事件を認めたと描く。だから歪曲というのである。
 無知もたくさんある。「木炭トラックを集落に乗りつけて略奪して来て兵隊達に分けるんだ」「強姦をやらない兵隊なんていなかった」というセリフが漫画にちりばめられている。この言葉は、南京城内に入ったこともない兵士の作り話で、アイリス・チャンの『ザ・レイプ・オブ・南京』にも引用されていたものだ。
 研究が足りないし、事件に対する無知からくるとしても、昭和十二年の南京に木炭トラックがあるかどうか、疑問を持たなかったのだろうか。常識からして分りそうなものである。
 南京大虐殺の疑問を中国人にぶつけると、日本人の方が南京大虐殺を主張していると返ってきて返答に窮することがある。南京大虐殺を主張している日本人とはまさしく本宮ひろ志その人である。


■あらゆる層から集英社へ抗議
 「国が燃える」に描かれた南京大虐殺が歪曲と無知から成っていることは、現代史に関心を持つ人なら容易に気づくことで、「週間ヤングジャンプ」が発売になってまもなく、インターネットで広まった。
 西村修平*2は、そのことをインターネットで知った。六年前、中国映画「南京1937」が公開されたとき、公共施設を映写場として貸与してよいものかどうか、西村修平氏は公共施設に質問状を出し、それによって貸与が撤回されたことがある。あの映画を彷彿させる残虐な場面が「国が燃える」にも描かれている。「人類が絶対に忘れてはならない日本軍による愚行があった。いわゆる"南京虐殺事件"である」と本宮ひろ志は断定している。見逃すわけにはいかないと思った西村氏は、さっそくその日、「週間ヤングジャンプ」の編集部に問い合わせをした。
 あちらこちら回された電話は、最後に切れてしまう。電話で埒があかないと考えた西村氏はすぐに集英社に赴く。
 このときはまともに対応してもらえず、翌日、改めて集英社に向かう。フィクションとはいえ、実在の人物が登場し、南京事件は事実だと描いている。若者をたぶらかすものであり。見逃すことはできない、と西村氏は集英社に繰り返した。
 台風が東京を襲っているときで、雨の中での抗議がつづく、二人で始まった抗議が、三人、五人とふえる。とうとう五日目、集英社は一週間後に返事すると回答をする。
 チャンネル桜の社長をつとめる水島総氏がインターネットで知ったのは西村氏から数日遅れであった。チャンネル桜は、日本のあるべき姿、国益、それらを考える番組づくりを中心にこの夏にはじまった衛星放送である。中国とのせめぎ合いがつづいているなか、まともな史料を参考にしないで南京大虐殺を描かれてはチャンネル桜としてだまっているわけにいかない。チャンネル桜の主力番組は、平日夜八時から二時間の「報道ワイド日本」である。さっそくここで取り上げるとともに、集英社へ取材を申し込む。
 「国が燃える」は本宮ひろ志の企画なのか、南京事件を取り上げるに際してどのような資料選択をしたのか。
 チャンネル桜から数日遅れて知ったのは大田区議会議員の犬伏秀一*3である。犬伏区議会議員もやはりインターネットで「国が燃える」の内容を知った。
 本宮ひろ志犬伏秀一議員は、航空自衛隊生徒の先輩後輩関係にあった。これまで本宮ひろ志が描く漫画には自衛隊生徒をうかがわせる場面があり、描かれる熱血漢もその流れにあると思っていたけれど、「国が燃える」の南京大虐殺は考証が稚拙であり、史実にない残虐シーンを若者向け雑誌に掲載していいのかも問題だ。
 いつもは外国人参政権などを話し合っている地方議員の意見を聞いてまわった。古賀俊昭都議会議員をはじめ四十三名から、見過ごすべきではないと意見が寄せられた。
 十月四日、犬伏議員は集英社に電話をする。長い間待たされたうえ、抗議があるなら書いて送ってほしいとの返事である。翌日、松浦芳子*4杉並区議会議員ら四人の議員と集英社に向かった。
 たとえば朝日新聞のように、マス・メディアの多くは自分の間違いを認めようとしない。また、チャンネル桜の抗議で分かったが、取材はするけれど、取材されることは拒否する。「国が燃える」に抗議した人たちは、抗議したものの、よい結果は簡単に望めないと思ったであろう。
 しかし、集英社内はそうでなかった。
 いったん抗議がはじまると、毎日二十件ほどの電話や手紙が寄せられだす。これまで集英社ではなかったことだった。インターネットは間違いの多さを批判して書き込みがふえだす。チャンネル桜は連日取り上げる。
 集英社では、連日、対策会議が開かれ、十月八日には最初の答えが出されることになった。事件が描かれて三回目の号が発売された翌日である。
 「国が燃える」は、残虐さが際立っていればいるほどストーリーが生きてくる。そのため南京の残虐な話が集められて描かれたけれど、作り上げられた話ばかりである。加えてニセ写真の引用。さらには裁判で係争中の百人斬り競争まで事実として描かれている。単行本化のとき間違いを訂正すると回答したものの、訂正すればストーリーが成りたたなくなる。
 抗議は、ひとつの組織だけからでなく、あらゆる層に及んでいた。抗議は拡大こそすれ、収束する気配はない。犬伏議員のように、続けながら訂正することを求める人もいたけれど、そうするとストーリーに一貫性がなくなる。
 回答から五日後の十三日、あと二回の連載をもって休載することが決まった。糊塗する道はどうしてもみつからなかったのである。単行本化では、五頁にわたって描きかえ、七頁を全部削除すると決まった。

チャンネル桜 水島総の名前も確認できますね♪
国が燃える」騒動があったときは、私自身南京事件なんかには全く興味なかったので、問題となった漫画も読んでいないのですが。阿羅氏の上げられている歪曲例と、休載は当然とする結論がいまいちピンときませんね*5
勿論、この程度の抗議に屈する集英社の事なかれ主義も酷いものがありますが。*6


で、阿羅さんですが。漫画休載を当然とする発言はもちろん。右翼団体として公安にマークされている、「維新政党・新風西村修平氏の上映妨害を肯定してるところなんて、ブーメランとして返ってこないですかねぇ?
なぜなら阿羅氏といえば、映画『南京の真実』の賛同者として名を連ね製作発表記念講演会において支援を呼びかける講演を行っている人物。この映画も予告編を見る限り、かなり創作が入ってる気がするんですけどねぇ...
まぁ上映妨害等、表現の自由を脅かす行為は互いに慎んでほしいものです。*7
 
最後に、軍紀に厳しかったらしい松井大将1937年12月20日の日記から抜粋しておきます。

尚聞く所、城内残留内外人は一時不少恐怖の情なりしか、我軍の漸次落付くと共に漸く安堵し来れり、一時我将兵により少数の奪掠行為(主として家具等なり)強姦等もありし如く、多少は已むなき実情なり。

 
 

*1:南京1937 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E4%BA%AC1937

*2:西村修平 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E6%9D%91%E4%BF%AE%E5%B9%B3

*3:犬伏秀一 http://www.inubushi.cc/

*4:松浦芳子 http://www4.ocn.ne.jp/~yoshikom/

*5:小林よしのりとかどうなんの?

*6:作者が面倒臭くなった可能性もありますが

*7:でも、やられても文句は言えないよね