戦争映画を採点する

 
中島今朝吾日記を掲載した『歴史と人物』1984年12月号を閲覧したとき、
この企画が載っていたので思わずコピりました。
企画自体も面白いんですが、鶴田浩二がいるのがなんとも豪華ですね。
  

座談会 戦争映画を採点する
愛好家6人が、芸術性、娯楽性、技術・考証の三点から判定した結果は
 
鶴田浩二・・・俳優
畑 暉男・・・映画評論家
福田幸弘・・・日本損害保険協会副会長
双葉十三郎・・・映画評論家
前田 慧・・・プラモデル店経営
秦 郁彦・・・拓殖大学教授 ※司会
 
■敗戦国の戦争映画
 
 今回の和洋双方の戦争映画を採点していただこうと、映画愛好家の皆さんにお集まりいただきました。対象は第二次大戦を扱ったものに限り、かつ戦後製作のものという条件で、映画評論家の双葉さんと畑さんにご相談し、候補作品を列挙いたしました。これらを、芸術性、娯楽性、技術・考証の三つの観点から各10点満点で採点していただいた結果が、別表のベスト10です。
 客観性を高めるため過半数の四人以上観ていることを条件にしましたので、三人しか観ていない、日本映画の「真空地帯」(新星映画/52/山本薩夫監督)、「海軍特別年少兵」(東宝/72/今井正監督)、「軍旗はためく下に」(東宝/72/深作欣二監督)、外国映画の「大列車作戦」(仏/64/ジョン・フランケンハイマー監督)はベスト10クラスの高点をとったのですが、惜しくも選外となりました。
 他に、外国映画では「戦艦シュペー号の最後」、「南太平洋」など日本映画のベスト10を上回る得点をとったものがいくつかありますが、両部門はあくまで別々のものということで等外に落ちてしまいました。
 さて、今も欠かさず映画を観ていらっしゃる専門家の双葉さんは、この結果にどんな感想をお持ちになりますか。
 
 双葉
 戦争映画といっても基準がいろいろあるので、ごく常識的に広く採ったわけだけど、だいたい順当な結果だと思いますね。私個人は「雲ながるる果てに」(5位)はもう少し上にいってもよいという気がします。
 
 
 鶴田さんはこの映画に出演なさっていましたね。
 
 鶴田
 していたようです。(笑)
 
 
 この映画は戦後わりと早い時期の作品ですから、まだ日本が貧乏な時代ですね。戦争映画はある程度お金をかけないといいものができないと思いますが。
 
 鶴田
 それは「雲ながるる果てに」だけでなく、当時はどの映画も同じでしょう。しかも映画自体が、占領軍とかの許可がないと何もできない時代だったから、芸術性といっても限られた中の芸術性なんで、芸術性云々なんて本当に言えるのか。リアルという言葉があるが、ではリアルにやれたか。やれるはずがない。当時はキス・シーンだって大変でした。そういう制約だらけの世情だったから、標準になりませんよ。
 
 福田
 敗戦国の戦争映画でしょう。映画自体が戦争批判的でなければいけないといった。制約というか、思いこみがある。ただ戦争批判していればいいといった、図式化された作品が次々に出て、それがランキングにも現れているという感じがします。芸術性といっても、戦争映画に芸術性がありうるのか。それに娯楽性といわれると、戦場生き残りの一人としてぼくはちょっと引っかかるな。(笑)
 
 双葉
 外国映画と条件がまるで違う。向こうは勝ったところを景気よく見せればいいということで、勇ましい英雄物語を作っていればいいんだけど、こちらはそうはいかない。後追いの、取ってつけたような理由をつけて・・・・・・。
 
 福田
 負けてから反省したという感じ。
 
 双葉
 ひじょうに観念的でね。イデオロギーが先にきちゃっているんです。
 
 鶴田
 「雲ながるる果てに」は、ご存じのように海軍の飛行予備学生十三期の話なんです。ぼくも海軍の学徒兵ですが、ぼくたちは十三期にぶんなぐられたほうで、あまりいい感情をもっていないわけですね(笑)。それで脚本をもらったときに一晩考えました。
 ぼくは、外国人に対する加害はともかく、同じ日本人への加害、つまり身内に対する加害者の役だけは絶対やるまい、あくまで被害者の立場だけやろうと心に決めていましたし、これをやったら同期の仲間から何をいわれるかわからないと思って、つらつら考えましたが、やはり学徒兵の話なんだから、十三期であろうと全体から見れば被害者であることに変りない、と。それで引き受けたんです。
 
 双葉
 あの作品には後でとってつけたような理屈が少ない。戦争にいやいや行ったとかね。そうじゃなくて、見た人が、それぞれに感じ取ってくれればいいという作り方をしている。だからぼくはいい作品だと思うんですよ。
 
 鶴田
 あの映画のラストシーンは特攻なんですが、一機も命中していない。ぼくと直居欽哉と二人で、ワンカットでもいいから命中したシーンを入れてほしい、と力説これ努めたのです。現に当っているアメリカのフィルムがあるわけで、嘘をつくわけじゃないんだと。
 彼らは血を吐くような訓練を重ねて、四十か六十時間の飛行体験しかないのに戦地へ出ていった。それは何のためだったか、命中するというたった一つの目的のためでしょう。それが当らなかったとなると、すべて無駄に終ったことになります。そうじゃなくて、彼らは目的を達し、任務を果して死んでいった。そう考えてやらないと可愛想です。
 
 
 その提案は通ったんですか。
 
 鶴田
 通りませんでした。直居さんは十三期の人なんですが、この人とぼくは試写がすんだあと、相擁して泣きましたよ。
 
 
■考証と技術、お金の使い方
 
 考証・技術という面ですが、考証のほうはともかく、お金がかけられないから、技術では日本映画はまだまだ外国映画に比べると差があるんでしょうね。
 
 前田
 というよりも、お金をかけてなくてもできる部分で、気を配っていない、というほうが多いんじゃないですか。
 
 双葉
 考証が足りないということですね。
 
 前田
 はい。たとえば、先日「零戦燃ゆ」を見てきたんですが、主人公の二人が横須賀航空隊から脱走する場面がありますが、その道が立派に舗装されている。当時、横須賀が裏道まで舗装されていたはずがない。それはまあ許せるとして、道路に描かれた白ペンキの交通標識まで画面に出てくると、もういけません。それに、主役とガールフレンドが自転車を並べて走るシーンがありますが、道路の側溝に今風の金網のふたがあったりする。私は楽しみで映画を観ているのであって、アラ探しが趣味ではないのですが、こういうのを見るとシラケてしまう。カメラ・アングルをちょっと変えればすむわけですし、編集段階でカットすることだってできるわけです。要するに、そこまでの気くばりがないんですね。
 
 福田
 その類の話はきりがない。山本五十六元帥が白手袋をはめて、兵隊と飯を食うなんていうのは、考えられないですよ。
 
 
 映画会社には考証の専門家はいないんでしょうか。
 
 鶴田
 いますよ、例外なく。専門家もつくし、愛好者といいますか、好きでロケ現場へ良く押しかけて、あれこれいう方もいます。
 たとえば九七(九七式艦上攻撃機)に乗っていた人なら九七に詳しいわけでしょう、九九(九九
艦上爆撃機)に乗っていた人なら九九についてはとても詳しい。だから必ず伝を求めて聞きにいっているはずなんですが。
 
 
 その点は以前のほうがよかったでしょうね。軍隊経験のある人がスタッフにもいて、大きな間違いならすぐに気がついて直せるとか。
 
 鶴田
 「零戦燃ゆ」を見ましたが、今はゼロ戦と呼んでいますが、本当は零戦零式艦上戦闘機*1です。まあ、それはよいとして、加山雄三君が演ずる隊長の操縦、あれでは、飛行機はどこへ行っちゃうかわからない。嘘であるとかいうより芝居風なんです。
 
 
 あの映画の場面、そういう細かいことじゃなくても、話している言葉にすごく抵抗を感じましたね。ドンピシャといった類の最近の言い回しがどんどんでてくる。あのころの兵隊はそんな言い方をしなかったはずなのに。
 
 福田
 戦争映画じゃありませんが、「瀬戸内少年野球団」で旧部下が上官に向って「提督」と呼びかけるシーンがあって、びっくりしました。
 
 
 私もびっくりした一人です。でも「零戦燃ゆ」は以前に比べると多少ましになったかなという感じがしたので、私は考証・技術の項でいい点(七点)をつけたんですが、双葉さん、鶴田さんは四点、前田さんにいたっては三点と、厳しいですね。(笑)
 
 前田
 何千万円もかけて実物大の零戦を復元した点は評価します。とくに単機が飛ぶときは、ラジコンを使っているらしく、ロング・ショットで撮っているとかなりいい線で撮れています。しかし、反転すると、主翼の足のひっこむ部分があるはずなのにないとか、B29や一式陸攻(一式陸上攻撃機)のシルエットがおかしいとか・・・・・・。
 
 鶴田
 まぜかえしちゃいけないけど、いま足とおっしゃったでしょう。しかし、当時の関係者は足(あし)とは言わないんですよ。脚(きゃく)と呼ぶんです。違和感というのは、そういうものじゃないですか。
 
 福田
 外国映画だとそういう違和感をあまり感じませんね。軍が続いているから食い違いができないまま継承されているのかもしれない。
 
 双葉
 まだ本物がたくさん残っているし。
 
 
 零戦は従来はすべてプラモデルでやっていたのを、今度はともかく原寸大のものを作ったということで、やはり迫力が違うなあと思ったのですが、軍艦となるといぜんリアリティが乏しくて・・・・・・。
 
 福田
 軍艦は一部分しか作れませんからね。「大和」なら艦橋だけとか。ブリキを張ったような感じが抜けない。全体像が遠景でしか現れないから、迫力が出ません。鉄のもつ量感やツヤが出ない。ミニチュアの特撮で補うんでしょうが、どうしてもチャチな感じが出ちゃう。レイテ海戦のような題材が映画化できない原因はそんなところにあると思いますね。
 
 鶴田
 船の場合、ごまかせないのは水玉じゃないですか。
 
 
 軍艦と同じぐらいの大きな泡が出てくる。「戦艦大和」のときもそうでした。
 
 鶴田
 あれはいくらなんでもがまんできないね。(笑)
 
 
 水柱なんかもうちょっと工夫できないものですかね。爆発の仕方も、まるで花火が破裂するようで・・・・・・。
 
 鶴田
 現状では無理ですね。
 
 福田
 アメリカで作った「ミッドウエイ」(76/ジャック・スマイト監督)でも無理がありましたね。実写を交えて救おうとしていますが。
 
 
■日本映画のベスト10

 
 そこでベスト10を眺めますと、次点の「零戦燃ゆ」が話題の中心になりましたが、一位「ビルマの竪琴」、二位「人間の条件」、三位「日本のいちばん長い日」という順位はどうでしょう。
 
 
 いま話題になった技術・考証、なかでもめんどうな特撮の入った場面が一つもないという作品が、上位を占めたということでしょうね。
 
 福田
 いずれも人間劇で、戦争の物量的側面を描いた作品はありませんねえ。
 
 双葉
 要するにお金がかかっていない映画ばかりだ・・・・・・。
 
 鶴田
 ロケーション費はプラス・アルファ・・・・・・。(笑)
 
 福田
 戦争批判をぶつけるという感じだから。
 
 
 特撮も駆使したという「連合艦隊」がかろうじて十位に入っていますね。
 
 福田
 これはちょっと見るにたえないですね(笑)。実際に乗って戦った者の感じから言うと。
 
 
 サイパン戦でしたか、最後の突撃でゾロゾロと兵士が歩いて行く。栄養たっぷりの男たちが・・・・・・。
 
 福田
 「大日本帝国」にも似たような場面がありましたが、実際の戦争はもっと悲惨なものです。そういうところにいつも女性が出てくるのはおかしいですね。戦争映画というのは激しい男性映画であって、男女の青春映画みたいな描き方にはどうしてもついていけない。(笑)
 
 双葉
 そういう映画に必ず二つか三つの家庭が出てきて、ウジウジした場面があるでしょう。あれがやり切れないんだなあ。
 
 
 そういう傾向にうんざりしたんで、「独立愚連隊」のような映画が出てきたんでしょうね。
 
 双葉
 憂鬱一方の描き方にもがまんができなくなったんでしょうね。
 
 
 双葉さんは娯楽性で満点をつけておられますね。
 
 双葉
 だっておもしろいもの(笑)。西部劇ですよ。あの時代にこういうものをつくろうという発想が、ぼくは断然気にいっちゃった。喜八ちゃんは戦争経験者ですし。
 
 前田
 戦争体験者といえば、加東大介ニューギニアの体験をもとに主演した「南の島に雪が降る」(東京映画・東宝/61/笠原良三監督)もカラッとした人情劇でよかったと思います。
 
 
■外国映画のベスト3

 
 この辺で外国映画に移りたいと思いますが、一位が「戦場にかける橋」、二位「Uボート」、三位「史上最大の作戦」とつづくわけですが。
 
 双葉
 こちらは日本映画と違って、ちゃんとした戦闘シーンのある映画がふんだんに入っていますね。
 
 福田
 勝っているから余裕があるんでしょう。
 
 双葉
 確かに、ベトナム戦争になると、アメリカ映画も日本映画に似てくる。
 
 
 一位の「戦場にかける橋」は多少反戦映画的な要素もあるんじゃありませんか。
 
 双葉
 映画としてよくできているということなんでしょうね。ぼくはウィリアム・ホールデンが最後にヒーローぶって活躍するところが好きじゃないけどね。
 
 
 人物が誇張されすぎていますよ。日本人の早川雪洲にしても。
 
 福田
 外国映画に出てくる日本軍のイメージにはひじょうに違和感があります。
 
 鶴田
 そうですね。
 
 
 第二位は日本と同じく敗戦国のドイツが作った「Uボート」ですが。
 
 福田
 ぼくは一位に推したんです。「Uボート」でドイツ映画がやっと自信を回復したので、日本の戦争映画も立ち直るかと期待したんですが、なかなか・・・・・・。
 
 
 あれは特撮の場面にそれほどお金をかけているわけではないでしょう。
 
 前田
 ええ、どちらかといえば安あがりに作っていますね。
 
 福田
 深海に潜んでいるときの感じがとてもよく出ていましたね。
 
 双葉
 それから、狭い通路をひじょうにうまく撮っていた。
 
 前田
 急速潜航するときに、手のすいた乗員が全員前へ走りますね。潜水艦の映画でああいうシーンは始めて見ました。
 
 福田
 敗戦国映画として大いに参考になるわけですが、妙な自己反省をしていないところがよい。客観的に突き放してつくっている。それで、最後にむなしく、やっと帰ってきたとたんに空襲でやられてしまう。つまりシナリオがいいんです。
 
 
 畑さんはあまり高い点を入れていませんが、どうしてですか。
 
 
 ドイツ映画特有の固さがあるという点ですね。それに潜水艦映画としては、「海の牙」(仏/45/ルネ・クレマン監督)とか「暁の出港」(英/49/ロイ・ベイカー監督)といった名作があるので、比較するとどうしても点が辛くなりました。
 
 
 第三位は「史上最大の作戦」ですが、畑さんはこれがトップですね。
 
 
 ぼくはこの企画の話を聞いたとき、おそらくこれが一位になるんじゃないかと思ったんですが。
 
 福田
 ひじょうにスケールが大きい。勝ち戦だから再現できたんでしょうが、作戦の各側面をくまなく描いていますね。なかでも戦闘を描くというのは戦争映画の必須条件だと思うんですが、その意味で「遠すぎた橋」(英/77/リチャード・アッテンボロー監督)をぼくは好きなので三位に入れたんだけど、ベスト10に残らなかったのが残念です。
 
 双葉
 あの映画はぼくも大好きなんです。もっとも失敗した作戦のほうですね。
 
 
 技術・考証では点の辛い前田さんが満点を付けておられますが。
 
 前田
 あの映画は特撮の場面が少なくて、実物がそのまま出てくる。ミニチュアの部分が少ないため、実物で撮影したところとの落差がほとんど見られない。だから、よくあれだけ実物をかき集めたということで十点をつけたわけです。
 私は戦争映画のベスト10なら「空軍大戦略」(英/69/ガイ・ハミルトン監督)が上位に顔を出すだろうと思ったのですが、英本土攻防戦はうけないのか、出てきませんでしたね。私は技術・考証に満点をつけたのですが、良すぎて人気が出ない作品でしょう。
 
 
 そうそう。「アフリカの星」(独/57/アルフレート・ワイデンマン監督)も欠点がなさすぎて、ベスト10から落ちたのが残念です。
 
 前田
 「トラ・トラ・トラ」(九位)は日米合作で、外国映画で唯一といえるかどうかわかりませんが、日本が勝っていますから、見ていて気持がいい。(笑)
 
 
■その他のベスト10
 
 お金をかけているという点では、ベスト10には入りませんでしたが、ソ連映画のスケールは大変なものですね。
 
 双葉
 「ヨーロッパの解放」(70/ユーリー・オーゼロフ監督)ですか。
 
 前田
 あの映画は国でつくっているから、ソ連軍が全軍をあげて参加しているわけでしょう。ぜいたくといえば世界一でしょうが、あんとなく見ていて楽しくない映画です。
 
 福田
 ぼくは「レニングラード攻防戦」(75/ミハイル・エルショフ監督)を第十位に入れたんですが、あれも大規模でしたね。
 
 双葉
 「世界と平和」だって、大変な物量作戦ですもの。ところがカット割が下手くそだから、大勢いてもちっとも効果がない。(笑)
 
 福田
 冗長で、物量を使ったわりには・・・・・・。
 
 
 盛りあがらない。
 
 福田
 出演人数が多すぎて敵か味方かわからなかったり。
 
 
 四位は「大脱走」と「ナバロンの要塞」ですが、「大脱走」がうけたというのは面白いですね。
 
 双葉
 スティーヴ・マックィーンのせいでしょうね。オートバイで駆けまわるところが・・・・・・。
 
 
 捕虜脱走の話ですから、戦争映画の本筋とはいえませんが。
 
 
 あくまで遊びです。
 
 双葉
 あくまでも脱走ゲームですから。
 
 
 フィクションですが、「ナバロンの要塞」だってゲームですよ。しかし、場所の設定とか、そういう配慮が行き届いている。だから見ていて抵抗がないんです。
 
 
 畑さんは「史上最大の作戦」と「ナバロンの要塞」のどちらにも十点を二つずつつけていますね。
 
 
 ちょっと甘すぎたかなあと思いますが、娯楽映画としてこれ以上のものはできないという気がしたものですから・・・。
 
 
 五位以下は別表のようにつづくのですが、"反戦映画"の系列で「禁じられた遊び」が六位になっていますね。
 
 鶴田
 ぼくはトップに入れた。
 
 双葉
 ぼくは二位ですが、まあ妥当な線かも知れませんね。
 
 
■戦中の名作
 
 今日は戦時中の映画は対象外とされましたが、子供のときに見た「加藤隼戦闘隊」(東宝/44/山本嘉次郎監督)などは、たいした特撮はないのですが、戦後改めて見てそれほど抵抗なく、よい映画だったと思います。むしろ、一連の東宝の大作のほうが、カラーなだけに抵抗感がありますね。
 
 
 私は、子供のころ「ハワイ・マレー沖海戦」(東宝/42/山本嘉次郎監督)を見て感激したんですが、この前リバイバルで見てがっかりしました。日本の特撮は下手だといっても、まだあれに比べればかなり現在は進歩している。
 
 双葉
 あの作品の特撮は「ゴジラ」の円谷英二ですが、飛行機を吊るす糸が見えているんですね。
 
 福田
 「五人の斥候兵」(日活/38/田坂具隆監督)もよかった。
 
 前田
 戦前派は戦時中の映画のほうが名作が多いと思うんじゃないですか。
 
 双葉
 「陸軍」(松竹/44/木下恵介監督)のラストで、田中絹代扮する母親の出征する息子の顔をもう一度見ようと群衆の後ろを追ってゆく姿を長々と撮るシーンがありますが、あれなどに今だに残る名場面ですよ。
 
 
 ぼくは「海軍」(松竹/43/田坂具隆監督)を戦争映画全体のベスト1か2に入れてもいいぐらいに思っています。
 
 
■ワースト1
 
 ところが三人しか見ていないんですが、「戦場のメリークリスマス」が日本・外国映画を通じて最低点をもらっていますね。福田さんがオール二点で計六点、私が合計九点で、双葉さんはそれより少し点がいいのですが、全部足してもやはり最低なんですが・・・・・・。
 
 福田
 これは日本人を侮辱する映画だと思う。坂本龍一の音楽はわりとよかったが、異常なセックスで若い者の関心を呼んだり、虐待のテーマだけを取りあげて、国際的な映画祭に売り込むようなことは、おかしいと思うんだ。なんであんなに騒ぐのか。こんなものはボツですよ。(笑)
 
 
 映画批評家は概していい点をつけていたんじゃありませんか。
 
 双葉
 ぼくだって、芸術性六点だから、あまりよくないですよ。
 
 福田
 ここでは問題にしなくてもいいんじゃないですか。
 
 
 ワースト1ということがはっきりしましたので、報告だけしておきます。(笑)

 

*1:鶴田氏は「零」を「レイ」と読んでいます。